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ロックの政府論から学ぶ時代性

## ロックの政府論から学ぶ時代性

### 17世紀イングランドの社会状況とロックの思想

ジョン・ロック(1632-1704)は、近代政治思想の父と称されるほど大きな影響力を持った思想家です。彼の主著『統治二論』(1689)は、王権神授説を批判し、国民の自然権に基づく社会契約説、抵抗権、そして権力分立を主張しました。これらの主張は、名誉革命(1688)後のイギリスの政治体制の根幹をなすものとなり、その後のフランス革命やアメリカ独立宣言にも大きな影響を与えました。

ロックの思想を深く理解するためには、彼が生きていた17世紀イングランドの社会状況を理解することが不可欠です。当時のイングランドは、清教徒革命(1642-1651)や名誉革命といった大きな政治的変革を経験しており、伝統的な社会秩序が大きく揺らいでいました。絶対王政を主張する国王と、議会を中心とするジェントリ層との間で激しい対立が繰り広げられ、ロック自身もそうした政治的動乱に巻き込まれていきました。

### ロックの自然権論と社会契約説:絶対王政への批判

ロックは、こうした時代背景の中で、人間は生まれながらにして「自然権」を持つと主張しました。自然権とは、人間の生命、自由、財産に対する権利であり、いかなる権力によっても侵害されるべきではないと考えました。これは、当時の国王の絶対的な権力に対する明確な批判であり、個人の権利と自由を重視する近代 liberalism の萌芽と言えるでしょう。

さらにロックは、国家の起源を「社会契約」に求めました。人々は、自然状態における不安定さを解消し、より安全に自然権を保障するために、自らの権利の一部を放棄し、国家に委ねることを選択したと考えたのです。この社会契約の概念は、国家権力の根拠が国民の合意に基づくものであることを明確化し、国民が主権を持つという思想へと繋がっていきます。

### 抵抗権と権力分立:限定された政府の実現に向けて

ロックは、国家権力が国民の権利を侵害する場合には、国民は抵抗する権利を持つと主張しました。これは、国王の絶対的な権力を制限し、国民の権利と自由を守るための重要な主張でした。抵抗権の行使は、市民革命や独立運動を正当化する根拠となり、近代民主主義の発展に大きく貢献しました。

さらにロックは、権力を一箇所に集中させることの危険性を指摘し、立法権、執行権、司法権を分離する「権力分立」の必要性を説きました。これは、特定の個人や機関が権力を独占することを防ぎ、相互に抑制し合うことで、権力の濫用を防ぐことを目的としていました。権力分立の考え方は、近代立憲主義の基礎となり、現代の民主主義国家の政治制度にも受け継がれています。

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