## ロックの人間知性論の話法
### 1.
明晰かつ明確な表現
ロックは、人間知性論において、何よりもまず
「明晰さ(clearness)」と「明確さ(distinctness)」を重視しました。
彼は、曖昧で不明瞭な言葉の使用が、
哲学的考察を混乱と誤謬に導くと考えました。
そのため、自身の議論においては、
可能な限り平易で理解しやすい語を用い、
各用語の定義を明確に示すよう努めました。
また、複雑な概念を説明する際には、
段階的な論理展開と適切な例示を用いることで、
読者の理解を助けることに留意しています。
### 2.
経験論に基づく議論
ロックの哲学は、経験論と呼ばれる立場に属します。
これは、人間の知識の源泉は、
すべて経験、すなわち感覚を通して得られる情報と、
内省によって得られる心の働きについての情報である、
とする立場です。
ロックは、人間知性論において、
この経験論の立場に基づき、
形而上学的な思弁や先験的な仮説に頼ることなく、
人間の心の働きを、
具体的な経験的事実から出発して説明しようと試みました。
### 3.
批判的分析
ロックは、
既存の哲学的概念や理論に対して、
常に批判的な態度で臨みました。
特に、デカルトが提唱した「生得観念」に対しては、
それが経験的事実によって裏付けられていないことを
鋭く指摘し、徹底的に反駁しました。
彼は、人間の心が白紙の状態(タブラ・ラサ)から出発し、
経験を通して徐々に知識を形成していく過程を、
詳細に分析することで、
生得観念の存在を否定しました。
### 4.
比喩や例示の活用
ロックは、抽象的な議論を展開するだけでなく、
読者の理解を深めるために、
巧みに比喩や例示を活用しています。
例えば、人間の心を白紙に例えたり、
観念の結びつきを糸に例えたりすることで、
難解な概念をより直観的に理解できるようにしました。
また、日常生活における具体的な事例を挙げながら、
自身の主張を分かりやすく説明することにも長けていました。