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ロックの人間知性論の批評

## ロックの人間知性論の批評

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経験論の限界

ロックは、人間の知識の源泉は経験であると主張し、生得的な観念を否定しました。これは、当時のデカルト主義への批判として重要な意味を持ちました。しかし、ロックの経験論は、いくつかの点で批判を受けています。

第一に、ロックは、すべての知識は感覚経験から導き出されると主張しましたが、感覚経験だけでは説明できない知識も存在します。例えば、数学や論理学の知識は、感覚経験とは独立した普遍的な真理を含んでいます。また、因果関係や実体といった概念も、感覚経験だけでは十分に説明できません。

第二に、ロックは、人間の心が白紙状態(タブラ・ラサ)で生まれ、経験によって知識が書き込まれると主張しました。しかし、この主張は、人間の心の働きや発達の複雑さを十分に考慮していません。例えば、言語習得や道徳性の発達には、生得的な能力や傾向が重要な役割を果たしていると考えられます。

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単純観念と複合観念の区別の問題

ロックは、人間の心は単純観念を組み合わせることで複合観念を形成すると主張しました。単純観念は、感覚経験や内省によって直接得られるものであり、複合観念は、単純観念を組み合わせたり抽象化したりすることで形成されるものです。

しかし、単純観念と複合観念の区別は、必ずしも明確ではありません。例えば、「赤」という単純観念は、実際には、様々な色合いの赤を含んでおり、それ自体が複合的なものである可能性があります。また、複合観念を形成するプロセスも、単純な組み合わせ以上の複雑な操作を含んでいる可能性があります。

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抽象観念の形成の問題

ロックは、抽象観念は、具体的な個々の対象から共通の特徴を抽象化することによって形成されると主張しました。しかし、抽象観念の形成プロセスは、ロックの説明よりも複雑である可能性があります。

例えば、「犬」という抽象観念は、単に個々の犬の共通の特徴を抽象化したものではありません。私たちは、「犬」というカテゴリーに属さない動物と区別するために、犬の本質的な特徴を理解している必要があります。この本質的な特徴は、感覚経験だけでは把握できません。

これらの批判にもかかわらず、「人間知性論」は、近代哲学における重要な著作として、その後の哲学に大きな影響を与えました。特に、経験主義の立場から、人間の知識の起源や構造を解明しようとした点は、高く評価されています。

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