Skip to content Skip to footer

ロックの人間知性論の思索

## ロックの人間知性論の思索

###

ロックの出発点:理性主義への疑念

ジョン・ロックの主著『人間知性論』は、当時の支配的な学派であったデカルトに代表される理性主義への批判から始まります。理性主義は、人間の理性の中に生得的な観念や原理があると主張しますが、ロックはこれを経験論の立場から否定します。

###

白紙状態の心:経験による知識の獲得

ロックは、「人間は生まれながらにして白紙状態の心(タブラ・ラサ)を持っており、そこに経験によって知識が書き込まれていく」と主張します。つまり、我々が持つあらゆる知識は、最終的には感覚経験、もしくは内的経験に由来するというのです。

この感覚経験とは、五感を通じて外界から受け取る感覚情報を指します。一方、内的経験とは、自分自身の心の内面における思考や感情などの活動を指します。

###

観念:心の素材

ロックは、経験を通して心に刻まれるものを「観念」と呼びます。観念は、単純観念と複合観念に分けられます。単純観念は、感覚や反省によって直接心に与えられる、分割不可能な要素です。例えば、「赤」「甘さ」「硬さ」「喜び」「悲しみ」などが挙げられます。

一方、複合観念は、複数の単純観念が結びついて構成される、より複雑な観念です。例えば、「りんご」という複合観念は、「赤」「丸い」「甘い」といった複数の単純観念が結びついて形成されます。

###

知識の分類:観念の関連付け

ロックは、知識とは「観念間の関連付けの認識」であると定義します。そして、知識を直感的知識、実証的知識、観念的知識の三種類に分類します。

直感的知識は、二つの観念が同一であるか異なるかを、推論を経ることなく直接的に認識するものです。例えば、「白は黒と異なる」という知識が挙げられます。

実証的知識は、感覚経験を通して得られる知識です。例えば、「火は熱い」という知識は、実際に火に触れて熱さを感じることによって得られます。

観念的知識は、既に持っている観念を比較したり、結びつけたりすることによって得られる知識です。例えば、「三角形の内角の和は180度である」という知識は、幾何学的な定義や定理に基づいて、観念的に導き出されるものです。

###

言語の役割:観念の伝達手段

ロックは、言語を「観念を伝達するための手段」と捉えます。言葉は、特定の観念を象徴する記号であり、それ自体に意味は持ちません。

言葉は、人々が共通の観念を共有することを可能にすることで、知識の伝達や社会生活において重要な役割を果たします。しかし、言葉の曖昧性や誤用は、誤解や論争を生み出す原因ともなり得るとロックは指摘しています。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5