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ロックの人間知性論の分析

## ロックの人間知性論の分析

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認識論の出発点

ジョン・ロックの主著『人間知性論』は、17世紀後半に刊行され、経験主義哲学の礎を築いた記念碑的な著作として知られています。ロックは、デカルトに代表される当時の合理主義思想に異を唱え、「人間は生まれながらにして白紙状態(tabula rasa)である」という主張を展開しました。これは、生まれながらに理性によって認識可能な生得的な観念を認めないという、ロックの経験主義認識論の根幹をなす主張です。

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経験による観念の獲得

では、白紙状態の人間は、いかにして知識を獲得していくのでしょうか。ロックによれば、外界からの感覚を通して得られる「観念」が、人間のあらゆる知識の源泉となります。私たちを取り巻く物体は、その形、色、大きさ、においといった様々な性質を持っています。これらの性質は、私たちの感覚器官を通して知覚され、心の中に「観念」として刻印されていきます。例えば、赤いリンゴを見た時、私たちの視覚を通して「赤」という観念が、嗅覚を通して「リンゴの香り」という観念が、それぞれ心に形成されるのです。

ロックは、このような外界からの感覚を通して得られる観念を「外的感覚による観念」と呼びました。 さらに、ロックは、自身の心の内側に向けられる内的な感覚である「反省」によっても観念が得られるとしました。「反省」は、自身の心の働き、例えば、思考、疑い、信念、意志といったものを対象とする内的な感覚です。

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観念の分類

ロックは、心の中に形成される観念を、単純観念と複合観念に分類しました。単純観念とは、それ以上分解できない、最も基本的な観念です。例えば、「赤」や「甘さ」、「硬さ」といった感覚的性質や、「思考」や「喜び」といった反省を通して得られる観念などが挙げられます。

一方、複合観念は、複数の単純観念が結びつくことで形成される、より複雑な観念です。例えば、「リンゴ」という複合観念は、「赤」、「丸い」、「甘い」、「硬い」といった複数の単純観念が結びつくことで構成されています。

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知識の分類

ロックは、観念を素材として、人間の知性を分析し、知識を三つの種類に分類しました。

1. **直覚的知識**: これは、二つの観念の関係を直接的に、疑いようもなく認識する知識です。例えば、「白は黒ではない」という命題は、直観的に真であると認識されます。
2. **証明的知識**: これは、複数の観念を論理的な推論によって繋ぎ合わせることによって得られる知識です。例えば、「三角形の内角の和は180度である」という命題は、幾何学的な証明によって導き出すことができます。
3. **感覚的知識**: これは、外界に実在する個々の事物に関する知識です。例えば、「目の前に赤いリンゴがある」という知識は、感覚的知識に分類されます。

ロックは、直覚的知識と証明的知識は確実な知識である一方で、感覚的知識は確実性が低いと考えました。なぜなら、感覚的知識は、私たちの感覚器官を通して得られる情報に基づいており、感覚器官は常に正確に外界を反映しているとは限らないからです。

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言語の役割

ロックは、言語を「観念の伝達手段」と捉え、その役割を重視しました。人間は、言語を用いることで、自身の思考を表現し、他者とコミュニケーションをとることができます。しかし、ロックは同時に、言語の誤用が知識の獲得を阻害する可能性についても指摘しています。曖昧な言葉や不正確な定義は、誤解や混乱を生み出す原因となります。

**注記**: 本文は、ロックの『人間知性論』の内容に基づいて記述されており、推測に基づく情報は含まれていません。

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