ロックの人間知性論の企画書
企画概要
17世紀後半、イギリス経験論の祖とされるジョン・ロックは、当時の学問の世界を席巻していたデカルト派の生得観念論に真っ向から反対し、人間のあらゆる知識の起源は経験のみに由来すると主張しました。本企画は、ロックが長年温めてきたこの革新的な epistemology(認識論)を体系的にまとめ上げ、後世に残る画期的な書物として出版することを目的とします。
背景と目的
古代ギリシャに端を発する生得観念論は、プラトン、アリストテレスといった巨人たちによって継承され、中世スコラ哲学においても絶対的な権威を誇っていました。17世紀に入り、近代哲学の祖とされるデカルトもまた、生得観念の存在を確信し、彼の合理主義哲学の基盤としていました。
しかし、ロックは、人間の心は本来「白紙状態(tabula rasa)」であり、そこに経験を通して知識が刻み込まれていくのだと考えました。この経験主義の立場から、ロックは、生得観念の存在を否定し、人間の知識の起源、構造、限界を徹底的に分析しようと試みました。
本書の内容
本書は、全4巻から構成され、以下の内容を網羅します。
第1巻 生得観念についての考察
デカルト派の主張する生得観念を批判的に検証し、その存在を否定します。
具体的には、普遍的同意、意識への内在、抽象的観念といった観点から、生得観念論の矛盾点を突きます。
第2巻 観念について — それは心の直接の対象である
人間の心は、外界の事物ではなく、観念を直接の対象として認識するという観念表象説を展開します。
そして、単純観念と複合観念を区別し、感覚経験と反省作用によって単純観念が獲得され、複合観念へと発展していく過程を詳細に説明します。
第3巻 言葉について
人間の思考は言葉によって表現され、他者と共有されます。
言葉の起源、意味、定義、誤用などを分析し、思考とコミュニケーションにおける言葉の役割を明らかにします。
また、抽象観念の形成における言葉の重要性を指摘します。
第4巻 知識について — その範囲と確実性について
知識とは、観念間の合致または不一致についての認識であると定義します。
直感的知識、実証的知識、信念の三つを区別し、それぞれの知識の確実性と限界を考察します。
特に、実証的知識の限界を認識し、神の存在や道徳の領域における推論の重要性を強調します。
読者層
本書は、当時の哲学、神学、教育に関心を持つ知識人層を主な対象として想定しています。
特に、デカルト哲学の影響力が増大する中で、経験主義の立場から新たな認識論を提示することで、従来の学問体系に一石を投じ、幅広い読者の知的関心を刺激することを目指します。