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ロックの人間知性論の仕組み

## ロックの人間知性論の仕組み

ロックの問い

ジョン・ロックの主著『人間知性論』 (1689年) は、人間の知識の起源、範囲、そして確実性を探求するものです。ロック以前は、デカルトをはじめとする合理主義が主流であり、人間は生まれつきある種の観念や原理を持っているとされていました。しかし、ロックはこのような生得説を批判し、人間の心は生まれた時は白紙の状態であるという「タブラ・ラサ」説を唱えました。

経験論の基礎

ロックによれば、私たちが持つあらゆる知識は、経験を通して後天的に獲得されます。そして、経験は大きく二つに分けられます。

* **感覚的経験:** 外界にある物体から感覚器官を通して得られる経験。
* **反省的経験:** 自分の心の内面的な働き、たとえば思考や感情、意志の働きなどから得られる経験。

私たちが最初に持つのは、感覚的経験を通して得られる単純観念です。例えば、「赤」、「甘い」、「硬い」といった個別の感覚的性質を認識する、単純で分割不可能な観念がこれにあたります。これらの単純観念をもとに、心は反省を通して、それらを組み合わせたり、比較したり、抽象したりすることで、より複雑な観念を作り出します。

観念の働き

ロックは、全ての知識は観念の間の結びつきとして存在すると考えました。観念には、単純観念と複雑観念の他に、「実体」と「様相」という重要な区分があります。

* **実体:** あるものを、それ自体として成り立たせているもの。
* **様相:** 実体ではないが、実体に依存して存在するもの。

例えば、「リンゴ」という実体には、「赤い」、「丸い」、「甘い」といった様相が存在します。私たちが外界の事物について認識できるのは、あくまでもその様相であり、実体そのものを直接認識することはできません。

知識の分類

ロックは、観念の結合のされ方によって、知識を三つに分類しました。

* **直覚的知識:** 明晰判明な観念同士の直接的な把握。例えば、「AはAである」といった同一律や、「全体は部分よりも大きい」といった命題は、直 intuition によって把握される自明の真理です。
* **実証的知識:** 感覚経験に基づいた、個別事実に関する知識。例えば、「このリンゴは赤い」といった知識は、感覚経験を通して得られます。
* **観念的知識:** 観念同士の関係を理性によって推論することで得られる知識。数学や倫理学などがこれにあたります。

このうち、最も確実なのは直覚的知識であり、次に確実なのは実証的知識です。観念的知識は、理性に基づいてはいますが、その前提となる観念が誤っていた場合には、誤った結論を導き出す可能性があります。

言語の役割

ロックは、言語を思考の道具として捉え、知識の伝達や思考の明確化に重要な役割を果たすと考えました。しかし、言語はあくまで思考の表現手段に過ぎず、言語そのものが知識を生み出すわけではありません。

以上が、ロックの『人間知性論』における主要な概念と仕組みです。

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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。

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