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ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史を読む

ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史を読む

歴史的背景

ヘレニズム時代 (紀元前323年から紀元前30年頃) は、アレクサンドロス大王の征服によって幕を開け、古代ギリシャの文化、言語、政治体制がエジプトからインドに至る広大な地域に広まった時代です。この時代、東方と西方の文化が融合し、学問、芸術、貿易が大きく発展しました。ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフ(1870-1952)は、この時代の社会経済構造を詳細に分析したロシア生まれのアメリカ人歴史家です。

本書の概要

ロストフツェフの主著である “The Social and Economic History of the Hellenistic World” (ヘレニズム世界社会経済史) は、1941年に出版されました。全3巻からなる大著で、ヘレニズム時代の政治、経済、社会、文化を包括的に扱っています。ロストフツェフは、膨大な量の碑文、パピルス、考古学的資料を駆使し、従来の政治史中心の見方とは異なる、社会経済史の観点からヘレニズム世界を描き出しました。

主要な論点

ロストフツェフは、ヘレニズム時代を古代ギリシャの衰退期と見る従来の見方に反論し、この時代をギリシャ文化が東方世界に広がり、新たな発展を遂げた時代として高く評価しました。彼は、ヘレニズム諸国の君主制と都市国家の共存関係、ギリシャ人とオリエント人の文化融合、経済活動の活発化などに注目し、ヘレニズム文明の独自性を強調しました。

本書の影響

“The Social and Economic History of the Hellenistic World” は、ヘレニズム時代研究の古典として、出版以来、多くの歴史家に影響を与えてきました。本書は、政治史中心の従来の歴史叙述を批判し、社会経済史という新しい視点を提供した点で画期的でありました。また、膨大な資料に基づいた詳細な記述は、現代のヘレニズム時代研究の基礎資料としても重要な価値を持っています。

現代における本書の評価

出版から70年以上が経過した現在でも、本書はヘレニズム時代を理解する上で欠かせない文献とされています。ただし、近年では、ロストフツェフの主張に対する批判や修正もなされています。例えば、彼が重視したギリシャ文化の影響力については、過大評価であるとの指摘があります。また、社会階層間の格差や奴隷制の問題など、ロストフツェフがあまり触れなかったテーマについても、近年では研究が進んでいます。

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