ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の位置づけ

古代史研究における位置づけ

ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフの主著『ヘレニズム世界社会経済史』（原題：The Social and Economic History of the Hellenistic World, 1941年）は、ヘレニズム時代（紀元前4世紀末から紀元前1世紀）を対象とした社会経済史研究の古典として、出版以来、学術的な議論に多大な影響を与えてきました。

ロストフツェフの主張

ロストフツェフは、従来のアレクサンドロス大王の東方遠征によるギリシャ文化の一方的伝播という解釈を退け、オリエント文化とギリシャ文化の融合による新たな「ヘレニズム文化」が成立したと主張しました。

評価と批判

ロストフツェフの著作は、膨大な史料に基づいた実証的な研究として高く評価されています。特に、従来軽視されてきた碑文やパピルス文書などを積極的に活用し、ヘレニズム世界の経済構造や社会階層を描き出した点は画期的でした。

その後の研究への影響

彼の著作は、ヘレニズム時代研究の出発点となり、後続の研究者に多大な影響を与えました。しかし、その一方で、ロストフツェフの主張は、現代の研究の進展に伴い、いくつかの点で修正が加えられています。例えば、ギリシャ文化とオリエント文化の融合を過度に強調しすぎた点、近代資本主義的な視点が導入されている点などが批判されています。

現代における意義

上記のような批判はあるものの、ロストフツェフの著作は、ヘレニズム時代研究の金字塔として、現代においても重要な価値を有しています。彼の広範な視野と綿密な実証研究は、現代の研究者にとっても、依然として学ぶべき点が多くあります。

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