ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の仕組み
古代世界の変容:ポリスからヘレニズム国家へ
ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフは、その代表作『ヘレニズム世界社会経済史』の中で、アレクサンドロス大王の東方遠征によって切り開かれたヘレニズム時代(紀元前4世紀~1世紀)を、古代世界の大きな転換点として捉えました。
従来の古代史研究では、ギリシャ・ローマを中心とした「ポリス」と呼ばれる都市国家の政治体制や文化に焦点が当てられてきました。しかしロストフツェフは、マケドニアの興隆とアレクサンドロス大王によるオリエント征服によって、従来のポリスの枠組みを超えた広大な「ヘレニズム国家」が成立したことを指摘します。
経済活動の拡大と社会構造の変化
ロストフツェフは、ヘレニズム時代の最大の特徴を、東方世界の広大な領土と人的・物的資源を背景とした、かつてない規模での経済活動の拡大と、それに伴う社会構造の変化に求めました。
アレクサンドロス大王の東方遠征によって、ギリシャ人たちはそれまで接することのなかったオリエント世界へと進出し、各地に植民都市を建設しました。これらの都市は、地中海世界とオリエント世界を結ぶ交易の拠点として繁栄し、莫大な富と人口を蓄積していきます。
都市と農村の相互依存関係
ロストフツェフは、ヘレニズム社会を特徴づけるもう一つの要素として、都市と農村の密接な相互依存関係を挙げます。
都市の繁栄は、それを支える農村部における農業生産の増大によって支えられていました。農村部では、ギリシャ人によって持ち込まれた先進的な農業技術や、大規模な灌漑事業によって生産性が向上し、都市への食糧供給を可能にしました。
ギリシャ文化の伝播とオリエント文化との融合
ヘレニズム時代の経済活動の拡大と社会構造の変化は、文化面にも大きな影響を与えました。ギリシャ文化は、東方世界に進出したギリシャ人によってもたらされ、各地に広がっていきました。
一方で、ギリシャ文化は各地の伝統的なオリエント文化と融合し、新たなヘレニズム文化を生み出していきました。このヘレニズム文化は、ローマ帝国にも受け継がれ、後のヨーロッパ文化の形成に大きな影響を与えました。
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