## ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の世界
ミハイル・ロストフツェフについて
ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフ（1870-1952）は、ウクライナ出身の古代史家で、特に古代ギリシア・ローマの経済・社会史研究に多大な貢献をしました。ロシア革命後、アメリカに亡命し、イェール大学などで教鞭を執りながら研究を続けました。
「ヘレニズム世界社会経済史」の出版と影響
ロストフツェフの代表作である『ヘレニズム世界社会経済史』（A Social and Economic History of the Hellenistic World）は、1941年に出版されました。全3巻からなる大著で、古代オリエントから引き継いだ伝統と、ギリシア文化が融合したヘレニズム世界の社会・経済構造を詳細に分析したものです。
ロストフツェフの視点
ロストフツェフは、従来の政治史中心のヘレニズム史研究を批判し、経済・社会構造に着目することで、より包括的なヘレニズム世界の理解を目指しました。
都市国家から領土国家へ
ロストフツェフは、アレクサンドロス大王の東方遠征を契機に、従来のギリシア的 polis（都市国家）に代わって、広大な領土を支配する Hellenistic monarchies（ヘレニズム王国）が出現したことを指摘しました。
経済活動の拡大と国際化
ヘレニズム時代には、オリエントとギリシア世界を結ぶ交易が活発化し、経済活動が拡大しました。ロストフツェフは、貨幣経済の発達や、エジプトのプトレマイオス朝に見られるような国家による経済統制など、当時の経済状況を具体的に分析しました。
社会構造の変化
政治体制や経済活動の変化に伴い、社会構造も大きく変容しました。ロストフツェフは、ヘレニズム王国の支配層、ギリシア人入植者、土着の住民など、様々な階層が併存する複雑な社会構造を描き出しました。
文化の融合と多様性
ヘレニズム世界では、ギリシア文化とオリエント文化が融合し、独自の文化が形成されました。ロストフツェフは、建築、彫刻、文学など、様々な分野における文化の多様性を指摘しています。