レーニンの帝国主義論に影響を与えた本
ホブソン著「帝国主義論」の影響
レーニンの帝国主義論に影響を与えた本として、ジョン・A・ホブソンの**「帝国主義論(1902年)」**が挙げられます。イギリスの経済学者であったホブソンは、同書の中で、当時の資本主義社会における帝国主義のメカニズムを経済的な視点から鋭く分析しました。レーニンの**「帝国主義は資本主義の最高段階である」**という主張は、ホブソンの分析に大きく影響を受けていたとされています。
ホブソンは、帝国主義の原因を先進資本主義諸国における**「過剰資本」**と**「過少消費」**の問題に見出しました。当時の資本主義社会では、生産力の増大に伴い、国内市場だけでは吸収しきれないほどの資本が蓄積されていました。同時に、労働者階級の貧困により、生産された商品を十分に消費することができませんでした。
この過剰資本と過少消費の問題を解決するために、資本家たちは海外進出、すなわち帝国主義政策に走ったとホブソンは主張します。植民地を獲得することで、過剰資本を投資する先を確保し、同時に安価な労働力と資源を獲得することができるからです。また、植民地は過剰生産物の市場としても機能しました。
レーニンはホブソンの分析を高く評価し、自身の帝国主義論に積極的に取り入れました。レーニンは、ホブソンの分析を発展させ、帝国主義を資本主義の必然的な帰結として捉えました。資本主義が発展するにつれて、生産はますます集中し、少数の独占資本家が経済を支配するようになります。そして、独占資本は国内市場ではもはや十分な利潤を得ることができなくなり、海外進出、すなわち帝国主義政策に突き進むことになるとレーニンは主張しました。
ホブソンの「帝国主義論」は、レーニンの帝国主義論に大きな影響を与えただけでなく、20世紀初頭の反帝国主義運動にも多大な影響を与えました。ホブソンの分析は、帝国主義が単なる軍事的な侵略ではなく、資本主義経済の構造的な問題に根ざしていることを明らかにした点で、画期的だったと言えるでしょう。