## レーニンの国家と革命の思想的背景
マルクス・エンゲルスの思想の影響
レーニンの『国家と革命』は、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの思想を土台としています。レーニンはこの著作で、マルクス・エンゲルスが様々な著作で展開した国家論を、詳細に検討し、発展させています。
特に重要な影響を与えたのは、以下の著作です。
* **『共産党宣言』(1848年)**:国家を「支配階級の道具」と規定し、プロレタリア革命による国家の廃絶を提起した。
* **『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(1852年)**:フランス二月革命後の政治状況を分析し、国家権力の自律性と相対的な独立性を指摘した。
* **『フランス内乱』(1871年)**:パリ・コミューンの経験を踏まえ、プロレタリア独裁の形態と任務について論じた。
レーニンはこれらの著作を精読し、マルクス・エンゲルスの国家論の核心を、**階級闘争、国家の階級性、プロレタリア革命による国家の廃絶**という三つの点に集約しました。
19世紀後半の資本主義と社会主義運動の展開
レーニンは、『国家と革命』を執筆した1917年当時、19世紀後半の資本主義と社会主義運動の展開を目の当たりにしていました。この時代の経験も、彼の思想に大きな影響を与えています。
19世紀後半、資本主義は帝国主義の段階に進み、世界中に植民地を拡大しました。また、資本主義経済はますます複雑化・巨大化し、国家の役割も拡大していきました。こうした状況は、マルクスの時代には明確に予想されていなかったものでした。
一方、社会主義運動は、ドイツ社会民主党を中心に、議会主義的な運動へと変化していきました。彼らは、革命ではなく、選挙を通じて徐々に社会主義を実現することを目指しました。レーニンは、こうした社会主義運動の「日和見主義化」を批判し、マルクス・エンゲルスが構想した革命的な国家論の意義を改めて強調する必要性を痛感しました。
ロシア革命の具体的な状況
『国家と革命』は、1917年2月革命後のロシアという具体的な状況の中で執筆されました。レーニンは、この著作の中で、ロシア革命を、世界資本主義を崩壊させるプロレタリア世界革命の出発点と位置づけています。
レーニンは、当時のロシアを、「帝国主義の最も弱い環」と見なし、プロレタリア革命によって、まずロシアで資本主義を打倒し、社会主義国家を建設することが、世界革命の突破口を開くことになると考えました。
この目標を達成するために、レーニンは、マルクス・エンゲルスの国家論を、ロシア革命の具体的な状況に適用し、プロレタリア独裁の形態や任務について、独自の理論を展開しました。