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レーニンの唯物論と経験批判論の光と影

## レーニンの唯物論と経験批判論の光と影

レーニンの唯物論と経験批判論における光

レーニンの『唯物論と経験批判論』は、1908年に発表された哲学書であり、当時のロシア社会民主労働党内の思想的混乱に対処するために書かれました。レーニンはこの著作で、マッハやアヴェナリウスに代表される経験批判論を批判し、弁証法的唯物論の立場から、認識論、自然科学の成果と哲学の関係、党派性と哲学の関係などについて論じています。

レーニンは、経験批判論が観念論に陥っていること、すなわち、世界を人間の感覚から出発して説明しようとする主観主義に陥っていることを批判しました。レーニンは、物質が意識に先行するという唯物論の立場から、人間の感覚は客観的な外界を反映したものであると主張し、経験批判論の主観主義を退けました。

また、レーニンは、自然科学の最新の成果、特に物理学における革命的な発見と唯物論の関係について論じました。19世紀末から20世紀初頭にかけて、物理学では、原子の不可分性やニュートン力学の絶対時間・絶対空間といったそれまでの常識を覆すような発見が相次ぎました。レーニンは、これらの発見は、物質の窮極的な構成要素や運動法則に関する認識を深めるものであり、唯物論を補強するものであると主張しました。

レーニンの唯物論と経験批判論における影

レーニンの『唯物論と経験批判論』は、その後のマルクス主義哲学に大きな影響を与えましたが、同時に、そのドグマティックな側面や、哲学的議論の粗雑さなどが批判の対象となることもあります。

レーニンの著作は、経験批判論に対する批判に多くのページを割いていますが、経験批判論の議論に対する理解が十分とは言えず、歪曲して批判しているとの指摘もあります。例えば、レーニンは、マッハやアヴェナリウスが「物自体」の存在を否定していると批判していますが、実際には、彼らは「物自体」の存在を完全に否定していたわけではなく、人間の認識の範囲を超えた「物自体」について論じることは無意味であると主張していたに過ぎません。

また、レーニンは、自然科学の成果を唯物論の正当性の根拠としていますが、科学理論は常に発展途上にあり、特定の科学理論を哲学的立場の根拠とすることは危険であるという指摘もあります。実際、レーニンが依拠した当時の物理学の理論は、その後、量子力学や相対性理論などの登場によって大きく変化しました。

さらに、レーニンは、哲学における党派性を強調し、ブルジョア哲学とプロレタリア哲学を峻別しようとしましたが、これは、哲学を政治的な道具として利用することに繋がりかねず、自由な思想や議論を阻害する危険性も孕んでいます。

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