## レヴィ＝ストロースの野生の思考とアートとの関係
野生の思考におけるブリコラージュ
レヴィ＝ストロースは、著書「野生の思考」の中で、未開社会の人々の思考様式を「野生の思考」と呼び、西洋の近代的な思考様式である「文明化された思考」と対比させて論じました。彼は、野生の思考は、与えられた環境の中で、限られた資源を用い、その場に応じた工夫を凝らすことによって、問題解決を図る「ブリコラージュ」という特徴を持つと指摘しています。
ブリコラージュとアート
レヴィ＝ストロースは、このブリコラージュという概念をアートにも適用しています。彼は、芸術家の創作活動を、ブリコルール（bricoleur）が、手元にある様々な素材を組み合わせ、新しい意味や価値を生み出す行為になぞらえています。
彼の分析によれば、芸術家は、既存の様式、技法、モチーフなどを素材として用い、それらを独自の感性と組み合わせることで、新しい芸術作品を生み出します。これは、未開社会の人々が、自然物を素材として、神話や儀式などの文化を生み出す過程と類似していると彼は考えました。
例えば、ピカソなどのキュビズムの画家たちは、アフリカの彫刻や仮面の影響を受け、それらの要素を独自の解釈で作品に取り入れました。レヴィ＝ストロースは、このような西洋近代芸術における「原始芸術」の援用を、ブリコラージュの一例として捉えています。
このように、レヴィ＝ストロースは、「野生の思考」という概念を通して、西洋と非西洋、近代と未開といった二元論を超え、人間の思考と創造活動の共通の基盤を探求しようとしました。