ル・コルビュジェの輝く都市を読む
都市計画のビジョン：理想と現実の狭間を読む
「輝く都市」は、20世紀の巨匠建築家ル・コルビュジェが1935年に発表した都市計画案であり、その後の都市計画に多大な影響を与えた書です。しかし、その内容はしばしば誤解や批判の対象となってきました。本稿では、「輝く都市」を読む上で重要なポイントを、歴史的背景やコルビュジェ自身の思想も踏まえながら解説していきます。
モダニズム建築の申し子、ル・コルビュジェ
ル・コルビュジェは、20世紀初頭に活躍したスイス生まれのフランス人建築家であり、近代建築の三大巨匠の一人に数えられています。彼は、近代建築運動の理念である「機能主義」「合理主義」を強く打ち出し、鉄筋コンクリートやガラスといった新しい素材を積極的に用いた建築を設計しました。彼の建築作品は、装飾を排したシンプルな形態と、機能性を重視した空間構成が特徴です。
「輝く都市」が生まれた時代背景
「輝く都市」が発表された1930年代は、世界恐慌やファシズムの台頭など、社会不安が高まっていた時代でした。都市においても、産業革命の影響による人口集中やスラム化、交通渋滞などの問題が深刻化しており、既存の都市構造では対応しきれない状況に陥っていました。こうした状況下で、コルビュジェは都市計画の抜本的な改革が必要であると痛感し、「輝く都市」の構想を練り上げていきました。
「輝く都市」の提案：高層建築と緑地帯の融合
「輝く都市」は、パリをモデルとした300万人規模の都市計画案で、当時の都市が抱えていた問題を解決するために、高層建築と緑地帯を組み合わせた革新的な都市構造を提案しています。具体的には、以下の点が挙げられます。
* **高層建築の導入:** 市街地の中心部に60階建ての高層ビルを建てることで、高密度の居住空間を確保し、地上の空間を解放する。
* **ゾーニング:** 都市機能を居住、業務、商業、工業の4つに分類し、それぞれを明確に区分することで、都市の効率的な運営を図る。
* **緑地帯の確保:** 高層建築によって生まれた地上の空間には、緑豊かな公園や緑地を配置し、都市に潤いを与える。
* **高速道路網の整備:** 都市の中心部を貫く高速道路網を整備することで、自動車交通の円滑化を図る。
「輝く都市」への批判と功罪
「輝く都市」は、発表当時からその革新性と大胆さゆえに、賛否両論の評価を受けてきました。批判的な意見としては、高層建築による日照権の侵害やコミュニティの希薄化、自動車交通を優先した都市構造などが挙げられます。
一方、緑地帯の重要性を認識し、都市の効率的な運営を目指した点は、現代の都市計画にも通じる先見性を持っていたと言えます。実際、「輝く都市」の構想は、その後に建設されたブラジリアなどの都市計画にも影響を与えています。
このように、「輝く都市」は、その実現可能性や問題点も指摘されつつも、20世紀の都市計画に大きな影響を与えた重要な構想といえます。