ル・コルビュジェの輝く都市が扱う社会問題
都市の過密化とスラム化
ル・コルビュジェが活躍した20世紀初頭、パリをはじめとするヨーロッパの都市は産業革命による人口集中と無秩序な都市開発によって、深刻な住宅難、衛生状態の悪化、交通渋滞、貧困、犯罪などの問題を抱えていました。特に都市の中心部はスラム化が進み、劣悪な環境下で人々が暮らしていました。ル・コルビュジェは、このような状況を「混迷」と捉え、既存の都市構造を根本的に変革する必要があると考えていました。
モダニズム建築の思想
ル・コルビュジェは、近代建築の五原則（ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面）を提唱し、機能的で合理的な建築を追求しました。彼は、大量生産と標準化によって高品質な住宅を効率的に供給することで、都市問題を解決できると信じていました。また、緑豊かな空間を都市に取り入れることで、人々の健康と精神的な豊かさを向上させることも目指していました。
社会的不平等と批判
「輝く都市」は、高層ビルが立ち並ぶ均質な都市空間を提案しており、その画一的な景観や住人の生活様式を規定するような計画は、個人の自由や多様性を軽視しているという批判があります。また、既存のコミュニティや歴史的な街並みを破壊してしまう可能性も指摘されています。
自然との共存
「輝く都市」は、高層ビルを緑豊かな公園で囲むことで、自然と都市の共存を目指していました。しかし、その一方で、都市への人口集中を促進することで、結果的に郊外の自然環境を破壊してしまう可能性も孕んでいます。