ルソーの社会契約論の原点
ルソーの思想的背景
ジャン・ジャック・ルソーは、1712年にジュネーブで生まれ、激動の18世紀ヨーロッパで活動した思想家です。彼の思想は、当時の社会状況や先行する思想家たちの影響を強く受けて形成されました。
社会契約論以前の政治思想
ルソー以前のヨーロッパでは、国家や政治権力の起源について、主に神学的な説明が一般的でした。王権神授説はその典型であり、国王の権力は神から与えられたものとされ、人々はそれに服従することが当然だと考えられていました。
自然状態と社会状態
ルソーは、国家が誕生する以前の「自然状態」において、人間は自由で平等であったと想定しました。しかし、社会の形成とともに、私有財産の出現や競争原理の導入などにより、人々の間に不平等や対立が生じたと考えました。
社会契約の概念
ルソーは、こうした社会状態における問題を解決するために、「社会契約」という概念を提唱しました。それは、個々人が自らの自由と権利の一部を社会全体に譲り渡す代わりに、共同体の一員としての自由と平等を保障されるというものです。
一般意志
社会契約によって成立する国家において、主権は「一般意志」に属するとされます。一般意志とは、個々の私的利益を超えた、社会全体の共通の利益を追求する意志のことです。ルソーは、直接民主制を理想とし、人々が自ら議論し、合意形成を通じて一般意志を実現していくことを重視しました。