## ルソーの学問芸術論の関連著作
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モンテスキュー「法の精神」
ルソーは「学問芸術論」の中で、啓蒙主義が社会の腐敗を招いたと批判していますが、その批判の対象にはモンテスキューも含まれていました。「法の精神」は、政治と社会の関係を分析し、権力分立の必要性を説いた著作です。ルソーはモンテスキューの論理を部分的に認めつつも、それが個人の道徳的な堕落を食い止めるには不十分だと考えていました。
ルソーは、「法の精神」に見られるような政治体制の改革だけでは、真の幸福は実現しないと主張しました。彼は、人間の自然な善良さを育む教育と、質素で自然な生活こそが重要だと考えていました。
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ヴォルテール「哲学書簡」
「哲学書簡」は、イギリスの社会制度や思想を紹介し、フランスの旧体制を批判した作品です。ルソーはヴォルテールの啓蒙思想に影響を受けましたが、「学問芸術論」では、文明や学問が人間を不幸にすると主張し、ヴォルテールとは異なる立場をとりました。
ルソーは、文明社会における競争や虚栄心が、人間の自然な善良さを損なうと批判しました。彼は、ヴォルテールが重視した理性や進歩よりも、感情や自然との調和を重視しました。
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ディドロ、ダランベール編集「百科全書」
「百科全書」は、啓蒙主義思想を体系的にまとめた一大叢書です。ルソーも執筆陣の一人として参加していましたが、「学問芸術論」で表明した文明批判は、「百科全書」の理念と相容れないものでした。
「百科全書」は、理性に基づいて知識を普及し、社会を改善することを目指していました。一方、ルソーは、学問や芸術が社会の不平等や腐敗を助長すると批判し、自然な状態への回帰を訴えました。
これらの著作との関連性を考察することで、「学問芸術論」におけるルソーの思想的立場や、当時の啓蒙主義との関係をより深く理解することができます。