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ルソーの学問芸術論の機能

## ルソーの学問芸術論の機能

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啓蒙主義への批判

ルソーの「学問芸術論」は、一見すると逆説的なタイトルが示すように、当時のヨーロッパ思想界を席巻していた啓蒙主義の風潮、とりわけ学問や芸術の進歩が人間を幸福に導くという楽観的な進歩史観に対する痛烈な批判として機能しました。ルソーは、学問や芸術の発展が必ずしも道徳的な向上をもたらすとは限らず、むしろ虚栄心や贅沢、退廃といった悪徳を助長し、人間を自然な状態から堕落させると主張しました。

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自然状態の概念の提示

「学問芸術論」においてルソーは、人間が本来持つ「自然状態」という概念を提示しました。これは、社会や文明の影響を受ける前の、自愛(amour de soi)と憐れみ(pitié)という二つの自然感情によってのみ行動していた状態を指します。ルソーは、この自然状態における人間は、文明社会におけるような不平等や腐敗とは無縁であり、より幸福な存在であったと論じました。

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社会契約論への布石

「学問芸術論」で提示された自然状態と文明社会における人間の堕落という問題は、後のルソーの代表作である「社会契約論」へと繋がっていきます。「社会契約論」では、堕落した社会をいかにして再建するかという問いに対し、ルソーは一般意志に基づく社会契約によってのみ真の自由と平等が実現されると主張しました。「学問芸術論」における文明批判は、ルソーの政治思想の根幹をなす重要なテーマを提示するものであり、「社会契約論」へと続く議論の出発点としての機能を果たしていたと言えるでしょう。

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