Skip to content Skip to footer

ルソーの学問芸術論の思考の枠組み

ルソーの学問芸術論の思考の枠組み

ルソーの問いかけ:学問芸術は風俗を浄化するのか?

ルソーは「学問芸術論」において、ディジョンアカデミーの懸賞論文のテーマ「学問芸術の復興は風俗の浄化に貢献したか」に対して、逆説的に「否」と答えます。一見すると学問や芸術は人間を高尚にするように思えますが、ルソーはそれが「外面的な虚飾」を生み出し、人間本来の善性を覆い隠してしまうと主張しました。

自然状態の人間と社会の人間

ルソーは、人間は本来「自然状態」においては、自己愛(amour de soi)と憐れみ(pitié)という自然本性に導かれ、善なる存在であると考えていました。自己愛は自己保存の本能、憐れみは他者の苦痛をわがことのように感じる感情です。しかし、社会が形成される過程で、人間は所有欲や虚栄心といった不自然な情念に支配されるようになり、他者との不平等や競争が生じます。

学問芸術の弊害

ルソーは、学問や芸術はこうした社会の悪弊を助長するものであると批判しました。学問は知識や教養をひけらかすための道具となり、芸術は贅沢や享楽を正当化する手段として用いられるようになったと考えたのです。そして、それらは人間を自然状態からますます遠ざけ、堕落させていくと主張しました。

徳への回帰:単純で自然な生活

「学問芸術論」でルソーは、堕落した社会を改革するために、人間本来の善性を取り戻すことが必要だと訴えます。それは、学問や芸術を否定するのではなく、それらが人間の徳(vertu)に貢献するものでなければならないことを意味します。ルソーは、自然状態への回帰は不可能であることを認めながらも、単純で自然な生活を送ること、そして理性ではなく、感性や情念を重視することによって、人間は真の幸福に近づけるとしました。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5