ルソーの学問芸術論の主題
学問と芸術の退廃への痛烈な批判
ルソーの「学問芸術論」は、一見華やかに見える学問と芸術が、実際には人間を堕落させているという痛烈な批判を展開した作品です。ルソーは、当時の啓蒙主義思想が称賛していた学問や芸術の進歩が、真の人間性や徳を蝕み、社会に腐敗と偽善をもたらすと主張しました。
自然状態における人間の善性と、文明社会における腐敗の対比
ルソーは、人間は本来、自然状態においては善良で、自らの良心と理性に従って生きていると考えていました。しかし、文明社会の発達に伴い、所有欲や虚栄心、不平等などが生まれ、人間は自然な状態から離れて堕落していくと論じます。学問や芸術は、こうした文明社会の悪徳を覆い隠し、人間をさらに堕落させるものとして、ルソーは厳しく批判しました。
真の徳と幸福の追求
ルソーは、学問や芸術の進歩ではなく、自然に回帰し、人間の本来の徳を回復することが重要であると主張します。真の幸福は、外的な要素ではなく、内面の心の平安と自己充足によって得られるものであり、それは自然状態に近い、素朴で質実な生活によって実現されるとしました。