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ルソーの学問芸術論と言語

ルソーの学問芸術論と言語

ルソーの「学問芸術論」における言語観

ジャン=ジャック・ルソーの「学問芸術論」(Discours sur les sciences et les arts, 1750年)は、当時の啓蒙主義思想への痛烈な批判として、大きな反響を呼びました。ルソーはこの中で、学問や芸術の発展が人間を堕落させ、道徳を腐敗させると主張しました。

言語の起源と自然状態

ルソーは、人間が自然状態においては、理性や言語を持たない、純粋で孤独な存在であったと考えていました。自然状態の人間は、自己保存と憐れみという自然な感情にのみ動かされ、他者との争いもありませんでした。しかし、社会の形成とともに、人間は所有欲や虚栄心などの不自然な情念に支配されるようになり、その結果、不幸と不平等が生じたとルソーは考えました。

言語の起源については、「人間不平等起源論」の中で詳しく論じられています。「学問芸術論」では、言語の発生は、人間の理性的な思考能力の発達と密接に関係しており、社会の形成と発展に不可欠なものであったことが示唆されています。

言語の堕落と文明批判

ルソーは、言語の発達と文明の進歩が、必ずしも人間の幸福に繋がるとは考えていませんでした。むしろ、言語は人間の虚栄心を刺激し、偽善や欺瞞を生み出す原因になったと批判しました。

洗練された言葉や修辞技法は、真実を覆い隠し、人々の心を操るために利用されるとルソーは考えました。その結果、人間は自然な感情や純粋な道徳を失い、堕落していくと主張します。

「学問芸術論」における言語の役割

「学問芸術論」で展開されるルソーの文明批判において、言語は重要な役割を果たしています。ルソーは、学問や芸術が、華美な言葉や複雑な論理を用いることで、人間を欺き、堕落させてきたと主張しました。

「学問芸術論」自体も、当時の学術的な論説とは異なり、明快で力強い文体で書かれています。これは、ルソーが意図的に、人々に直接訴えかけるような、より自然な言語を用いようとしたためだと考えられます。

ルソーの思想における言語の重要性

ルソーは、人間の堕落の原因を言語そのものに見出すのではなく、言語が社会の中でどのように使用され、どのように人間に影響を与えているのかという点に関心を寄せていました。

ルソーの思想は、その後の言語論、特に言語が思考や社会に与える影響についての研究に大きな影響を与えました。

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