ルソーの孤独な散歩者の夢想に影響を与えた本
プルターク英雄伝
古代ローマ時代の著作家プルタルコスによる『英雄伝』は、ギリシャとローマの偉人たちの伝記を集めた書物であり、ルソーの思想や作品に深い影響を与えた書物の一つとして知られています。特に晩年の作品『孤独な散歩者の夢想』において、その影響は色濃く表れています。
『英雄伝』は、単なる歴史書ではなく、道徳的な教訓を含んだ書物としてルソーに受け止められていました。ルソーは、古代ギリシャやローマの人々の生き様や思想に強い憧憬を抱いており、『英雄伝』に登場する偉人たちの高潔な精神や勇敢な行動に感銘を受けていました。
『孤独な散歩者の夢想』において、ルソーは自然の中を散策しながら、過去の記憶や現在の心境を綴っていきます。その中で、古代ギリシャやローマの偉人たちのエピソードが頻繁に登場します。例えば、ソクラテス、カトー、ブルータスといった人物たちの生き様は、ルソーにとって一種の理想像として機能していました。
ルソーは、『英雄伝』から、個人と社会の関係、自由と道徳、幸福の在り方など、重要なテーマに関する示唆を得ていたと言えるでしょう。『孤独な散歩者の夢想』は、ルソーが『英雄伝』から受けた影響を独自に消化し、自身の内面世界と重ね合わせながら紡ぎ出した作品と言えるかもしれません。