## ルソーの告白の評価
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文学史における位置づけ
「告白」は、ジャン=ジャック・ルソーが晩年に自身の人生を赤裸々に綴った自伝的作品です。1782年に出版された第一部、1789年に出版された第二部から成り、ルソーの生い立ちから1765年までの半生が描かれています。
この作品は、従来の英雄や聖人を描いた自伝とは異なり、自身の内面や弱さ、罪や過ちを隠すことなく告白するという形で書かれています。この大胆な試みは、文学史上、画期的な出来事として高く評価されています。「告白」は、その後の文学、特にロマン主義文学に大きな影響を与え、自己分析や内面の表現を重視する文学の潮流を生み出すきっかけとなりました。
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作品の特徴
「告白」の特徴としては、以下の点が挙げられます。
* **詳細な心理描写:** ルソーは自身の記憶を頼りに、幼少期の記憶から青年期、壮年期の心の動きまでを詳細に描写しています。
* **自己正当化と自己嫌悪:** ルソーは自身の行動を正当化しようとしながらも、同時に自己嫌悪に陥る様子も赤裸々に描かれています。この相反する感情の描写が、人間の複雑さを浮き彫りにしています。
* **社会への批判:** ルソーは自身の生い立ちや経験を通して、当時の社会や人間関係における偽善や不条理を批判しています。
* **恋愛体験の告白:** ルソーは、自身の恋愛遍歴についても包み隠さず記しています。特に、ヴァランス夫人との恋愛は、彼のその後の人生に大きな影響を与えた出来事として詳細に描かれています。
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評価と批判
「告白」は、出版当時から大きな反響を呼び、現在に至るまで多くの読者を魅了し続けています。
**肯定的な評価**としては、
* **近代人における自己意識の誕生を描いた作品**
* **人間の複雑さを赤裸々に描き出した傑作**
* **社会や人間関係に対する鋭い洞察に満ちている**
といった点が挙げられます。
一方で、 **批判的な意見**としては、
* **自己中心的で誇張表現が多い**
* **事実と異なる記述や自己弁護的な内容が含まれている**
といった点が指摘されています。
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「告白」の影響
「告白」は、後世の文学に多大な影響を与え、スタンダールの「赤と黒」、フローベールの「感情教育」など、多くの作品に影響を与えたと言われています。また、心理学や精神分析学の分野にも影響を与え、フロイトはルソーの思想を高く評価していました。
今日においても、「告白」は人間の心の深淵を覗き込むことができる作品として、多くの読者に愛読されています。