ルソーの告白の秘密
「告白」における真実と演出
ジャン=ジャック・ルソーの「告白」は、その衝撃的な内容と赤裸々な告白によって、出版当時から大きな反響を呼びました。しかし、この作品を「告白」という単語通り、ありのままの真実を語ったものと解釈するのは早計です。ルソー自身も「告白」の中で、「私は自分の肖像画を描く、唯一無二の肖像画を描くのだ」と述べており、単なる事実の羅列ではなく、彼自身の意図や演出が大きく介在していることがうかがえます。
隠蔽された真実
「告白」では、ルソーは自身の数々の恋愛や、他者との葛藤などを赤裸々に描写しています。しかし、同時に、彼にとって不都合な真実や、彼のイメージを損なう可能性のある出来事については、意図的に隠蔽したり、曖昧な表現を用いてぼかしたりしている箇所も見られます。例えば、自身の子供たちを孤児院に預けた件については、後悔の念を示しながらも、その背景や詳細な経緯については多くを語っていません。
自己正当化の試み
「告白」全体を通して感じられるのは、ルソーの強い自己弁護の意識です。彼は、自身の犯した過ちや、他者とのトラブルについて語る際、その責任を自分自身に帰するのではなく、周囲の人々や環境のせいにする傾向が見られます。これは、当時の社会状況や、彼自身の置かれていた立場を考慮する必要はありますが、同時に、自己正当化の試みと解釈することも可能です。
「告白」を読む上での注意点
「告白」はルソーという複雑な人物の思考や心理を理解する上で非常に重要な資料であることは間違いありません。しかし、それはあくまでもルソーというフィルターを通して描かれた彼自身の世界であることを忘れてはなりません。読者は、その内容を鵜呑みにするのではなく、客観的な視点と批判的な精神を持って接する必要があると言えるでしょう。