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ルソーの告白の構成

## ルソーの告白の構成

第一部

第一部は、1712年のルソーの誕生から、1741年、彼がパリに移住するまでの29年間が描かれています。この部分は、年代順に彼の幼少期、少年期、青年期の経験が語られます。

* **幼少期**: 母親を亡くした悲しみ、父の愛情、叔父叔母の家での生活、感受性の強い性格、読書へのめり込みなどが描かれます。特に、プラトンやプルタルコスといった作家の影響は大きく、後の人格形成に繋がっていきます。
* **少年期**: 職人への徒弟奉仕、厳格な親方からの体罰、家出を決意するまでの葛藤などが描かれます。また、この頃は、自然への愛、孤独への傾倒、空想の世界への逃避などが顕著になります。
* **青年期**: 様々な職業を転々とする経験、裕福な未亡人であるド・ワラン夫人との出会いと庇護下の生活、音楽の勉強、パリへの憧れなどが描かれます。この不安定な時期を通して、ルソーは自身の才能や社会における自分の立場に疑問を抱き始めます。

第二部

第二部は、1741年から1765年までの約25年間、パリでの生活を中心に描かれています。この時期は、ルソーが社会との関わりを深め、思想家・作家としての道を歩み始める重要な時期となります。

* **パリでの生活**: ディドロ、ダランベールといった啓蒙思想家たちとの交流、百科全書派への参加、作曲家としての活動、テレーズ・ルヴァスールとの出会いなどが描かれます。この時代は、ルソーにとって知的興奮と創作意欲に満ちた時期でしたが、同時に、人間関係のトラブルや社会への幻滅も経験します。
* **思想家としての活動**: 「学問芸術論」の執筆と発表、その内容が巻き起こした論争、ディドロとの決別、「人間不平等起源論」「社会契約論」などの主要著作の執筆などが描かれます。ルソーはこれらの著作を通して、文明社会に対する批判、自然状態における人間の自由と平等、社会契約による政治体制の必要性などを主張しました。
* **私生活における苦難**: テレーズとの生活の困窮、子供たちを孤児院に預けたことへの苦悩、周囲の人々からの誤解や非難などが赤裸々に描かれます。この個人的な苦しみは、ルソーの思想を深化させると同時に、彼を孤独で苦悩に満ちた晩年に導く要因となります。

第三部

第三部は、1765年以降、ルソーがフランス国内を放浪し、最終的に亡くなる1778年までの晩年を描いています。この期間は、ルソーが迫害と闘いながら、自身の内面を深く見つめ、作品を書き続けた時期です。

* **迫害と放浪**: 「エミール」と「社会契約論」が弾圧されたことによるフランスからの亡命、各地を放浪する生活、孤独と不安定な精神状態などが描かれます。この間もルソーは執筆活動を続け、「新エロイーズ」「告白」などの作品を生み出します。
* **内省と回想**: 過去の出来事や人間関係を振り返り、自らの行動や心情を分析します。特に、テレーズとの関係、子供たちを預けたこと、友人たちとの葛藤などが詳細に語られます。晩年のルソーは、自らの罪と苦悩に向き合いながら、赦しを乞うかのように自身の生涯を振り返っていきます。
* **「ルソー対全ヨーロッパ」**: 周囲の人々からの誤解や非難に対し、自らの正当性を主張します。ルソーは、自分を迫害する者たちこそが偽善者であり、自分は真実を語っているのだと訴えます。この「ルソー対全ヨーロッパ」という構図は、「告白」全体を通して見られる重要なテーマです。

「告白」は、このようにルソーの生涯を三つの部に分けて年代順に構成されています。各部はそれぞれ異なるテーマと内容を持ちながら、全体を通してルソーの複雑な内面世界、思想の変遷、そして彼の人生における光と影が鮮やかに描き出されています。

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