## ルソーの告白の思考の枠組み
告白という行為の意義
ルソーにとって『告白』は単なる過去の出来事を記録した回想録ではありません。彼は自らの内面をありのままに描き出すことで、人間存在の本質に迫ろうとしました。
自己愛と自己憐憫
ルソーの思考の中心には、自己愛(amour de soi)と自己憐憫(amour-propre)という対比があります。自己愛は自己保存の自然な欲求であり、他者への同情や共感の源泉でもあります。一方、自己憐憫は他者との比較から生まれる虚栄心や優越感、劣等感といった感情です。 ルソーは、社会が発展するにつれて自己愛が自己憐憫へと変質し、人間関係が複雑化し、不平等や不幸が生じると考えました。
自然状態と社会状態
『告白』では、ルソーが経験した様々な出来事が、自然状態と社会状態という対比構造を通して語られます。 自然状態とは、社会や文明の影響を受ける前の、人間本来の善良な状態です。 彼は幼少期や自然の中で過ごした時間などを通して、この自然状態の幸福を体験したと述べています。 しかし、社会に足を踏み入れることで、人間は所有欲や競争心、虚栄心といったものに支配され、堕落していくと考えました。
透明性の追求
ルソーは、偽善や欺瞞に満ちた社会において、自らの内面を赤裸々にさらけ出す「透明性」を重視しました。 彼は自らの過ちや弱さ、性的な欲望までも隠さずに告白することで、読者の共感を得ようとしたのです。
感情の重視
ルソーは理性よりも感情を重視し、 感情こそが人間の行動や判断の根源であると考えました。 彼は自らの心の動きをละเอียดに描写することで、読者に感情移入を促し、人間の本質を理解させようとしたのです。