## ルソーの人間不平等起源論の話法
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問いと仮説の設定
ルソーは、ディジョンアカデミーの懸賞論文の問い「人間の間の不平等は自然の秩序に由来するものか。」に対して、「人間不平等起源論」を執筆しました。
この問いに対し、ルソーは「自然状態における人間は善であり、社会が人間を堕落させた」という仮説を立てます。
この仮説を証明するために、ルソーは自然状態と社会状態を対比しながら論を進めていきます。
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自然状態の描写
ルソーは、自然状態における人間を「高貴な野蛮人」として描きます。
自然状態の人間は、自己保存の本能と他者への憐れみの情によってのみ動かされ、理性や言語、社会性を持たない存在です。
ルソーは、自然状態における人間は、文明社会の人間が失ってしまった純粋さや幸福を保持していたと主張します。
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社会状態への移行と不平等の発生
ルソーは、私有財産の発生を社会状態への移行の契機として捉えます。
私有財産の発生は、労働、言語、理性、家族などの社会的な制度を生み出し、同時に人間間に競争と対立をもたらします。
ルソーは、社会契約によって国家が形成されても、不平等は解消されないと主張します。
国家は、支配階級の利益を守るために利用され、不平等は固定化していくからです。
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雄弁術とレトリック
ルソーは、「人間不平等起源論」の中で、読者に直接語りかけるような雄弁な語り口を用いています。
また、比喩や反語、皮肉などを駆使することで、読者の感情に訴えかけ、自説の説得力を高めています。
例えば、ルソーは、文明社会における人間を「鎖につながれた不幸な奴隷」と呼び、自然状態の幸福と対比させることで、読者に文明社会の矛盾を鋭く突きつけます。
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注釈と補遺
「人間不平等起源論」には、本文に加えて、多数の注釈と補遺が付されています。
注釈では、本文で展開された議論を補完したり、他の思想家の説を紹介したりしています。
一方、補遺では、本文で扱いきれなかったテーマについて、より詳細な考察を加えています。
これらの注釈と補遺は、「人間不平等起源論」の理解を深める上で重要な役割を果たしています。