## ルソーの人間不平等起源論の普遍性
ルソーの主張：自然状態と不平等の発生
ルソーは、「人間不平等起源論」の中で、人間社会における不平等の起源と発展を考察しています。彼は、人間が自然状態においては自由で平等であったと主張しました。自然状態の人間は、自己保存と憐れみという自然感情に導かれ、他者を傷つけることなく生きていました。しかし、社会の形成とともに私有財産、労働の分業、比較などが生まれ、人間は自然状態から逸脱し、不平等な社会へと足を踏み入れていくことになります。
普遍性への疑問：歴史的・文化的差異
ルソーの主張は、人間の自然状態という仮説に基づいており、歴史的な裏付けに乏しいという批判があります。また、文化人類学的な視点からは、世界各地の社会には、ルソーが想定したような自然状態とは異なる様々な社会形態が存在することが指摘されています。例えば、所有の概念が希薄な社会や、競争よりも協調を重視する文化も存在します。
現代社会への示唆：不平等の構造
ルソーは、社会の進歩が必ずしも人間の幸福に繋がるとは限らないことを示唆しました。彼は、社会の複雑化と進歩が、新たな形の不平等を生み出し、人間を不幸に導く可能性を指摘しています。現代社会においても、経済格差、情報格差、教育格差など、様々な形の不平等が存在し、深刻な社会問題となっています。
普遍性を考える上での視点：人間の性質
ルソーの議論は、人間の本性に関する考察に基づいています。彼は、人間が自己愛と憐れみという相反する感情を持つと同時に、理性と perfectibilité （完成可能性）という能力を備えていると考えました。これらの要素が、人間社会における不平等の発生と発展に深く関わっているとルソーは考えたのです。