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ルソーの人間不平等起源論の批評

## ルソーの人間不平等起源論の批評

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ルソーの描く「自然状態」への批判

ルソーは「人間は本来善良な自然状態から、社会によって堕落させられた」と主張しますが、この「自然状態」の描写には多くの批判があります。

* **実証性の欠如**: ルソーの「自然状態」は、歴史的資料や実証的な根拠に基づいておらず、あくまで思考実験の産物に過ぎません。そのため、彼の描く「自然状態」が実際に存在したのか、また、それが人間の本質を正しく捉えているのかについては疑問視されています。
* **ロマン主義的な理想化**: ルソーは「自然状態」における人間を、自愛と憐れみの情によってのみ行動する、高潔で純粋な存在として描いています。しかし、この描写は、人間の持つ利己心や競争心といった側面を軽視しており、現実の人間像からかけ離れているという指摘があります。

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所有の概念に対する批判

ルソーは「最初の囲い込みをした者が、不平等と不幸の根源を作った」と述べ、私的所有の発生を批判しています。

* **所有の定義の曖昧性**: ルソーは「所有」の概念を明確に定義していません。土地の所有だけでなく、道具や食料など、どこまでを「所有」と見なすかによって、不平等の発生時期や原因も異なってきます。
* **所有の必然性**: 人間が社会を形成し、発展していくためには、ある程度の所有と分配のルールが必要不可欠であるという反論があります。ルソーは所有による弊害を強調する一方で、それが社会秩序や文化の発展に果たす役割について十分に論じていません。

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社会契約論への批判

ルソーは、不平等な社会を克服するために「一般意志」に基づく社会契約の必要性を説いています。

* **「一般意志」の不明確さ**: 「一般意志」とは何か、また、どのようにしてそれを発見できるのかについては、ルソー自身の説明が十分ではありません。抽象的な概念であるため、解釈が難しく、独裁や衆愚政治に利用される危険性も孕んでいます。
* **現実の社会への適用可能性**: ルソーの社会契約論は、小規模で均質な社会を前提としており、複雑で多様な現代社会にそのまま適用することは困難です。

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