## ルソーの人間不平等起源論の思索
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自然状態における人間
ルソーは、人間が社会を形成する以前の「自然状態」において、理性を持たず、自己保存の本能と他者への哀れみによってのみ行動していたと想定しました。この状態の人間は、今日の文明社会におけるような、理性に基づいた道徳や正義、所有の概念などを持たず、ただ自然の欲求のみに従って生きていました。
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不平等の発生と発展
ルソーは、自然状態からの脱却、すなわち社会の形成こそが、人間社会に不平等をもたらしたと主張します。自然状態からの変化は、気候変動などの自然的要因により、人間が協力して生活せざるを得なくなったことから始まります。
共同生活の中で、人間は理性や言語を発達させ、他者との比較や所有欲を持つようになります。そして、富の蓄積や分業、私有財産の出現といった過程を経て、人間社会には不平等が生まれ、固定化していくのです。
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所有の概念と不平等の固定化
ルソーは、「最初に土地を囲い込み、『これは私のものだ』と言って、だまされるほど単純な人々を見つけた者が、文明の真の創始者であった」と述べています。私有財産の発生は、他者を排除し、自らの利益を追求するエゴイズムを生み出し、それが不平等を正当化する論理を生み出したとルソーは考えました。
所有の概念は、労働や才能の差による不平等を正当化する根拠となり、社会における支配と服従の関係を生み出します。ルソーは、このような不平等な社会構造が、人間の堕落、すなわち自己愛や虚栄心、権力欲に支配された状態を生み出すと批判しました。