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ルソーの人間不平等起源論と時間

## ルソーの人間不平等起源論と時間

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時間概念の欠如

ルソーは『人間不平等起源論』の中で、自然状態の人間は時間概念を持っていなかったと主張します。自然人は、目の前の欲求に突き動かされ、未来への展望や過去への後悔を持たずに生きていました。

ルソーは、自然状態の人間を「孤独で、怠惰で、ほとんど常に沈黙している」と描写しています。彼らは、空腹や渇きなどの生理的な欲求を満たすためだけに活動し、それ以外の時間を睡眠や休息に費やしていました。

自然人は、言語や理性といった能力を欠いており、自己意識や他者との関係性も発達させていません。そのため、彼らは過去や未来を想像したり、自らの存在について深く考えることができませんでした。

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時間の発生と不平等の発生

ルソーによれば、時間の概念は、人間が社会を形成し、所有の概念を獲得する中で生まれてきたものです。社会の形成に伴い、人間は他者との比較や競争を通じて、自らの所有物を増やそうという欲求に駆られるようになります。

所有の概念は、時間の概念と密接に結びついています。なぜなら、所有物は過去の労働の産物であり、未来の利益を生み出す源泉でもあるからです。所有物を守るためには、未来を予測し、計画を立てる必要があり、その過程で時間に対する意識が芽生えます。

時間概念の発生は、人間の不幸の始まりでもありました。未来への不安や過去への後悔に悩まされるようになり、自然状態にあったような純粋な幸福は失われてしまいました。

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時間の流れと不平等の固定化

時間の流れは、不平等を固定化する方向に作用します。所有の概念が確立されると、一部の人間がより多くの富や権力を手にするようになり、その状態が世代を超えて受け継がれていくからです。

ルソーは、私的所有を「あらゆる不平等の源泉」と呼び、それが社会における様々な問題を引き起こすと考えていました。貧富の格差、権力闘争、犯罪の発生などは、すべて私的所有に起因するものと見なしています。

ルソーは、不平等を解消するために、社会契約に基づく政治体制の必要性を説きました。社会契約によって、人々は自らの自由の一部を放棄する代わりに、平等と安全を保障されることになります。

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