## ルソーの人間不平等起源論とアートとの関係
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ルソーの「人間不平等起源論」におけるアートの位置づけ
ルソーは「人間不平等起源論」の中で、人間社会における不平等の起源を説明しようと試みています。彼は、自然状態における人間は自愛と憐憫の情によってのみ突き動かされ、そこには不平等は存在しなかったと主張します。しかし、社会の形成、特に私有財産の出現によって人間は自然状態から逸脱し、不平等が生じたと論じます。
ルソーはこの過程において、アート、特に装飾や贅沢と結びついたアートが重要な役割を果たしたと考えています。彼は、自然状態の人間は必要性に基づいて自然の産物を利用するのみで、アートや装飾に関心を抱かなかったと述べています。
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アートがもたらした弊害
ルソーは、社会が形成され私有財産と競争が出現すると、人々は他者よりも優位に立ちたいという欲求、すなわち虚栄心を持つようになると主張します。この虚栄心を満たすために、人々は自身の所有物を装飾したり、自身の能力や才能を誇示したりするためにアートを用いるようになります。
ルソーにとって、このようなアートはもはや自然な欲求を満たすためのものではなく、他者との比較や優越性の追求、つまり不自然な社会が生み出した虚栄心を満たすための手段と化してしまっています。そして、この虚栄心を満たすためのアートの追求が、さらなる不平等と社会の腐敗を招くとルソーは批判しました。
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ルソーの考える「自然」とアートの関係性
ルソーは「自然」という概念を非常に重視しており、自然状態の人間は善良で、社会の腐敗によって堕落したと考えています。ルソーにとって、真の幸福は自然状態におけるような、自然との調和の中で見出されるべきものでした。
ルソーは、アートは必ずしも悪であると断定しているわけではありません。しかし、社会が発展し、虚栄心が蔓延する中で、アートは本来の目的から逸脱し、不平等や腐敗を助長する要因となりえると考えています。