## ルソーのエミールの世界
エミールの教育について
ジャン=ジャック・ルソーの『エミール、または教育について』(以下『エミール』)は、1762年に出版された教育論と哲学的小説を融合させた作品です。ルソーは、当時の社会を鋭く批判し、人間本来の善良な nature(自然)を重視した新しい教育のあり方を提示しました。
自然に従う教育
ルソーは、人間は生まれながらにして善良な存在であり、社会によって堕落すると考えました。
そのため、子どもの自然な発達を妨げない「自然に従う教育」が重要だと説いています。
五編構成と各期の教育
『エミール』は全五編から構成され、各編で年齢に応じた教育方法が示されています。
* **第一編(乳児期)**: 子どもの自然な欲求を尊重し、五感を育む。
* **第二編(幼年期)**: 遊びを通して心身を鍛え、感覚経験を重視する。
* **第三編(少年期)**: 有用な知識や技術を、体験を通して学ばせる。
* **第四編(青年期)**: 理性、道徳心、社会性を育む。
* **第五編(成人期・ソフィーの教育)**: エミールの妻となるソフィーの教育と、結婚生活について論じる。
教育における否定的な教えの排除
ルソーは、子どもに教え込むのではなく、体験を通して自発的に学ばせることが重要だと考えました。
そのため、早期教育や詰め込み教育、体罰などを否定し、子どもの興味や関心に基づいた教育を重視しました。
社会との関わり
ルソーは、社会と隔絶された教育を理想としたわけではありません。
自然の中で成長したエミールは、青年期以降、社会と関わり、市民としての責任を果たすことが求められます。
ソフィーの存在と女性の教育
『エミール』第五編では、エミールの妻となるソフィーが登場します。
ソフィーの教育は、男性であるエミールに従属的な存在となるように設定されており、ルソーの女性観に対する批判も存在します。