ルソーのエミールが扱う社会問題
教育の不平等
ルソーは、当時の社会における教育の不平等を厳しく批判していました。当時の教育は、上流階級の子弟に古典や芸術を教えることで、彼らを支配者層として育成することを目的としていました。一方、庶民の子弟は、労働力として必要な最低限の知識や技能しか与えられませんでした。ルソーはこのような教育制度が、社会における不平等を固定化し、人々の才能を stifled するものだと考えていました。
エミールでは、社会的地位に関わらず、すべての子どもが平等に教育を受ける権利を持つべきだと主張しています。ルソーは、子どもたちは生まれながらにして持っている自然な好奇心や学習意欲に基づいた教育を受けるべきだと考えました。自然と触れ合い、五感をフル活用することで、子どもたちは自発的に学び、成長していくことができるとルソーは信じていました。
社会における偽善
ルソーは、当時の社会に蔓延する偽善を嫌悪していました。上流階級の人々は、外面ばかりを気にして、道徳や宗教を口先だけで語り、実際には自己中心的で虚栄に満ちた生活を送っていました。ルソーはこのような偽善が、社会全体の腐敗を招くと考えていました。
エミールでは、自然な感情や感覚を大切にすることを通じて、子どもたちが偽善に染まらないように育てることを目指しています。ルソーは、子どもたちに正直さ、誠実さ、思いやりなどの美徳を教え、彼らが社会の偽善に抵抗できる強い心を育むことを望んでいました。
女性の役割
ルソーは、女性の役割は家庭における妻や母親としての役割に限定されると考えていました。この点は、現代の視点から見ると時代遅れで性差別的であると批判されています。しかし、ルソーの主張は、当時の社会において女性が男性に従属的な立場に置かれていた現実を反映したものでした。
エミールでは、女性は男性を支え、家庭を守り、子どもを育てるという役割を担うべきだとされています。しかし、ルソーは女性も教育を受ける権利を持つべきだと考えていました。ただし、その教育内容は男性とは異なり、家庭生活を送る上で必要な知識や技能に限定されるべきだと主張していました。