## ルソーの「学問芸術論」の思想的背景
### 18世紀フランス社会の状況
ルソーが「学問芸術論」を執筆した18世紀フランスは、啓蒙主義の時代と呼ばれ、理性に基づいた社会改革が叫ばれていました。
啓蒙思想家たちは、人間の理性によって社会の進歩と幸福を実現できると信じており、そのために学問や芸術の効用を説いていました。
特に、科学アカデミーを中心とした科学技術の発展や、サロンと呼ばれる文化人が集う社交の場における文学や哲学の議論は、当時のフランス社会に大きな影響を与えていました。
### ルソーの思想的源泉
ルソーは、古代ギリシャ・ローマの思想、特にプラトンやプルタルコスから大きな影響を受けています。
プラトンの著作からは、理想国家における教育の重要性や、人間の魂の三区分論などを学びました。
また、プルタルコスの「対比列伝」からは、古代ローマにおける共和制の精神や、偉人の生き方から学ぶという歴史観を吸収しました。
### ルソーの批判の矛先
ルソーは、「学問芸術論」において、当時のフランス社会における学問や芸術の隆盛が、必ずしも人間を幸福に導いているわけではないと批判しました。
彼は、学問や芸術が人間の虚栄心を煽り、贅沢や堕落を招いていると考えました。
また、理性よりも感情や自然を重視する立場から、当時の理性中心主義的な風潮に異議を唱えました。
### ルソーの主張の独自性
ルソーの主張は、当時の一般的な啓蒙思想とは一線を画すものであり、大きな論争を巻き起こしました。
彼の思想は、後のロマン主義や社会主義など、近代思想の形成に大きな影響を与えています。
ルソーは、「学問芸術論」を通して、人間性の本質や社会のあり方について、独自の視点から鋭い洞察を提示したのです。