## ルカーチの歴史と階級意識の対称性
対称性とは何か
ルカーチの主著『歴史と階級意識』において、対称性という概念は明確に定義されていません。しかし、本文中で繰り返し登場するいくつかの対概念や関係性から、その意味するところを推察することができます。
主観と客観の対称性
ルカーチは、伝統的な唯物論が陥っていた客観主義を批判し、主観的要因である階級意識の重要性を強調しました。しかし、ルカーチにとって重要なのは、主観と客観を二項対立的に捉えるのではなく、両者が歴史的発展の中で相互に規定しあう関係にあることを明らかにすることでした。
プロレタリアートは、その階級的立場から、資本主義社会の全体像を捉える「客観的な主体」となる可能性を秘めています。つまり、プロレタリアートの主観的な階級意識が、客観的な歴史の進歩の要因となりうるということです。
疎外と実践の対称性
資本主義社会においては、労働者は自らの労働の成果から疎外され、物化的された関係の中に生きています。ルカーチは、この疎外からの克服を、プロレタリアートが革命的実践を通じて歴史の主体となる過程として捉えました。
実践は、単なる行動ではなく、主観と客観、意識と存在を媒介する活動であり、疎外された状態を打破し、真の主体性を回復するための道筋となります。
理論と実践の対称性
ルカーチは、マルクス主義を「実践の理論」と捉え、理論と実践の不可分性を強調しました。正しい理論は、実践から生まれ、実践を導くものでなければなりません。
プロレタリアートの階級意識は、理論と実践の統一を通じて、客観的な歴史の進歩を促進する力となります。
全体と部分の対称性
ルカーチは、ヘーゲルの弁証法を継承し、全体と部分の相互連関を重視しました。個々の現象は、全体との関連においてのみ真に理解することができます。
プロレタリアートは、その階級的立場から、資本主義社会の全体構造を把握し、歴史の進歩を推進する役割を担います。