## ルイスのナルニア国物語が扱う社会問題
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戦争と平和
ナルニア国物語は、第二次世界大戦中に執筆された作品もあり、戦争と平和というテーマが色濃く反映されています。特に、『ライオンと魔女』では、ペベンシー家の4人の子どもたちは、戦火を逃れて田舎に疎開しますが、ナルニアの世界に迷い込みます。そこで、白い魔女の支配からナルニアを解放するために、アスランと共に戦います。
この物語は、子どもたちにとっての戦争体験のメタファーと解釈できます。戦時下の恐怖や不安、そして愛するものを守るための勇気や自己犠牲の精神が、ファンタジーの世界を通して描かれています。また、戦争がもたらす悲劇や、平和の尊さについても考えさせられます。
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善と悪の対立
ナルニア国物語には、アスランのような善の象徴と、白い魔女やミラースのような悪の象徴が登場し、その対立が物語の根幹を成しています。しかし、単純な勧善懲悪の物語ではなく、登場人物たちの心の葛藤や、善悪の境界線の曖昧さ、悪に染まることの誘惑なども描かれます。
例えば、エドマンドは白い魔女の甘い誘惑に負けてしまい、ナルニアを裏切ってしまいます。しかし、その後、アスランの愛と犠牲によって改心し、ナルニアのために戦うことを決意します。このように、ナルニア国物語は、善と悪の二元論に留まらず、人間の内面に潜む光と影、そして贖罪と赦しの可能性を示唆しています。
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信仰と宗教
ルイス自身が敬虔なキリスト教徒であったことから、ナルニア国物語にはキリスト教的な寓意が色濃く反映されています。特に、アスランはイエス・キリストを象徴する存在であり、その死と復活は、キリストの受難と復活を暗示しています。
また、ナルニア世界における魔法や奇跡は、信仰の力や神の奇跡を象徴しているとも解釈できます。ルイスは、ファンタジーの世界を通して、子どもたちにキリスト教の教えを分かりやすく伝えようとしたのです。
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差別と偏見
ナルニア国物語には、様々な種族が登場しますが、そこには現実社会における差別や偏見を反映した描写もみられます。例えば、『カスピアン王子のつのぶえ』では、テルマール人による旧ナルニア種族への差別が描かれています。
また、『馬と少年』では、黒人のような肌の色を持つカロールメン人が、奴隷制度や人種差別に苦しむ姿が描かれています。ルイスは、このようなファンタジー世界の設定を通して、現実社会における差別や偏見の問題を浮き彫りにし、読者に考えさせることを意図していたのかもしれません。
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自然と環境問題
ナルニア国物語では、豊かな自然と動物たちが登場し、その美しさや神秘性が描かれています。しかし同時に、人間による自然破壊や動物虐待に対する批判も込められています。
例えば、『朝びら丸 東の海へ』では、乱獲によって海の生物が減少している様子が描かれています。また、『銀のいす』では、森が人間によって破壊され、動物たちが苦しんでいる様子が描かれています。ルイスは、ナルニアの世界を通して、自然の大切さや環境問題について警鐘を鳴らしていると言えるでしょう。