リースマンの孤独な大衆の感性
内指向型と伝統指向型
デイヴィッド・リースマンは、著書『孤独な群衆』の中で、社会の変遷に伴い、人間の性格構造が「伝統指向型」「内指向型」「他人指向型」の3つの類型に変化していくと論じました。伝統指向型は、前近代社会に見られるように、伝統や慣習に強く束縛された性格です。人々は、先祖代々受け継がれてきた価値観や行動規範に従って生活し、個人の自由よりも共同体の安定を重視します。
近代社会においては、産業革命や都市化の進展に伴い、人々は生まれ育った地域社会から離れ、新たな環境で生活することを余儀なくされました。このような状況下で台頭してきたのが、内指向型です。内指向型の人は、自分の内面的な価値観や良心によって行動を決定します。彼らは、外部からの圧力に屈することなく、自らの信念に基づいて行動することを重視します。
他人指向型
リースマンは、20世紀半ばのアメリカ社会において、他人指向型が支配的な性格類型になりつつあると指摘しました。他人指向型の人は、周囲の人々からの承認や評価を強く求める傾向があります。彼らは、絶えず他人の期待や流行に気を配り、周囲にうまく適応することで、自分の価値を認めさせようとします。
リースマンは、他人指向型の台頭を、大量消費社会の出現とマス・メディアの発達と関連付けて論じています。大量生産された均質な製品が市場にあふれ、広告やメディアを通じて大衆文化が広く浸透していく中で、人々は周囲の流行やトレンドに敏感になり、他者との差異を意識するようになるからです。
現代社会における感性
リースマンは、他人指向型の蔓延が、現代人の不安や孤独感を増大させていると指摘しました。他人からの承認に過度に依存することで、人々は自分の内面的な価値観や信念を見失い、空虚な消費活動に走ってしまうからです。
また、リースマンは、他人指向型社会においては、画一的な価値観が蔓延し、多様性や個性が失われていくことを危惧していました。彼は、現代人が真の意味での自由と幸福を獲得するためには、他人の目を気にせずに、自分らしく生きることを重視する必要があると訴えました。