## リースマンの孤独な大衆が扱う社会問題
伝統指向型社会における社会化
リースマンは、伝統指向型社会においては、社会化が強力な伝統や慣習、儀式によって行われると述べています。人々は、親や地域社会から受け継いだ価値観や行動規範に従って生活し、社会からの逸脱は厳しく罰せられました。
このような社会では、個人のアイデンティティは、所属する集団やその伝統との結びつきによって規定されます。人々は、自分が社会の中でどのような役割を担うべきかを明確に理解しており、その役割を果たすことに満足感を見出していました。
近代社会における内部指向型人間
産業革命や都市化の進展に伴い、伝統的な社会構造は崩壊し始めます。人々は、生まれ育った地域社会を離れ、都市部へと移住し、新たな生活様式や価値観に触れるようになりました。
このような変化の中で、リースマンは、「内部指向型人間」が出現したと指摘します。内部指向型人間は、幼少期に親や教師から内面化された価値観や道徳観を、自らの行動の指針とします。
彼らは、伝統的な権威や社会規範に盲目的に従うのではなく、自らの良心や理性に基づいて判断し、行動しようとします。また、自己実現や個性の確立といった目標を重視し、競争社会の中で成功を収めるために努力します。
現代社会における他人指向型人間と孤独の蔓延
リースマンは、20世紀半ばのアメリカ社会において、「他人指向型人間」が台頭しつつあると警告を発しました。他人指向型人間は、周囲の人々の期待や承認を過度に気にするようになり、自らの内面的な価値観よりも、他者からの評価を重視するようになります。
彼らは、常に周囲の流行やトレンドに敏感であり、他人に受け入れられるように、 자신의 言動や服装、ライフスタイルを変化させます。
リースマンは、他人指向型人間が増加する背景には、マスメディアの発達や消費社会の拡大があると分析しています。マスメディアは、大量生産された画一的な価値観やライフスタイルを人々に植え付け、消費社会は、人々を「消費者」として同質化させます。
その結果、人々は、自らの内面的な価値観を見失い、周囲の期待に迎合するだけの、空虚で孤独な存在になっていくとリースマンは警告しています。
さらに、リースマンは、他人指向型人間が蔓延する社会では、人間関係が表面的で希薄なものになると指摘します。人々は、本音で語り合ったり、互いに深く理解し合ったりすることを避け、うわべだけの付き合いを好みます。
その結果、孤独感はますます増大し、人々は、不安や空虚感を抱えながら、満たされない日々を送ることになります。