リヴィウスのローマ建国史の話法
歴史的背景
リウィウスが『ローマ建国史』を執筆した時代は、紀元前1世紀末から紀元1世紀初頭にかけてのローマ帝国初期にあたります。これは、長く続いたローマ共和政が終焉を迎え、アウグストゥスによって帝政が開始された激動の時代でした。アウグストゥスは、内乱を終結させ、ローマに平和と繁栄をもたらした人物として、ローマ社会の道徳的・政治的な刷新を図ろうとしました。
修辞法と文体
リウィウスは、優れた文筆家として知られており、巧みな修辞法を用いて物語を劇的に表現することに長けていました。彼は、歴史的事実の記述だけでなく、登場人物の心理描写や演説、戦闘シーンなどを生き生きと描き出すことで、読者を古代ローマの世界に引き込みました。また、リウィウスは、キケロなどの古典的なラテン語散文の伝統を受け継ぎ、明瞭かつ雄弁な文体を駆使しています。
史料批判
リウィウスは、『ローマ建国史』の執筆にあたり、先行する歴史家たちの著作や、公文書、碑文、伝説などを参考にしています。しかし、彼は現代の歴史学のような厳密な史料批判を行っていたわけではなく、伝説や伝承を積極的に取り入れていた点が指摘されています。これは、彼が歴史書を単なる事実の記録ではなく、教訓や道徳、ローマ人の誇りを伝えるための重要な手段と考えていたためです。