## リヴィウスのローマ建国史の案内
ローマ史の金字塔
「ローマ建国史」(Ab Urbe Condita Libri) は、紀元前1世紀の古代ローマの歴史家ティトゥス・リウィウスによって著された、ローマ建国から著者と同時代までのローマ史を叙述した書物です。全142巻にも及ぶ大著でしたが、現在では35巻分のみが完全に残されています。
現存する内容と構成
現存する35巻の内容は以下の通りです。
* **第1巻から第5巻:** ローマ建国から紀元前390年のガリア人のローマ侵略までを扱っています。
* **第6巻から第10巻:** 紀元前389年から紀元前293年までのサムニウム戦争などを扱っています。
* **第11巻から第20巻:** 紀元前292年から紀元前219年までのピュロス戦争や第1次ポエニ戦争の開始までを扱っています。
* **第21巻から第45巻:** 紀元前218年から紀元前167年までの第2次ポエニ戦争やマケドニア戦争などを扱っています。
失われた97巻の内容は、概要を伝える梗概(periochae)や、後の時代の歴史家による引用などから部分的に知ることができます。
史料としての価値と限界
リウィウスの「ローマ建国史」は、古代ローマ史を理解する上で非常に重要な史料です。しかしながら、リウィウスは歴史家であると同時に、優れた文学者でもありました。そのため、「ローマ建国史」は歴史書としての正確さと客観性よりも、文学作品としての面白さや教訓性を重視して書かれている側面があります。
具体的には、登場人物の演説や心理描写が生き生きと描かれていたり、劇的な効果を狙った構成がなされていたりします。また、リウィウス自身の道徳観やローマに対する愛国心が、歴史記述に影響を与えている点も指摘されています。
ローマ史を超えて読み継がれる古典として
「ローマ建国史」は、歴史書としての価値に加え、ラテン文学の傑作としても高く評価されています。その雄大なスケール、登場人物の描写力、洗練された文体は、古代から現代に至るまで、多くの読者を魅了してきました。
ルネサンス期には人文主義者たちによって再評価され、マキャベリやモンテーニュなど、多くの思想家や作家に影響を与えました。現代においても、歴史書としても文学作品としても、色褪せることなく読み継がれています。