## リヴィウスのローマ建国史の光と影
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ローマ史叙述の記念碑的作品
「ローマ建国史」は、ローマ帝政初期の歴史家ティトゥス・リウィウスが、建国から紀元前9年までのローマの歴史を叙述した、全142巻にも及ぶ大作です。 その内容は、王政ローマの伝説時代から、共和政を経て、アウグストゥスによる帝政開始に至るまでの、ローマ史全体を網羅する壮大なものでした。
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詳細な叙述と文学的才能
リウィウスは、膨大な資料を渉猟し、ローマ史の出来事を詳細に記録しました。 彼の文章は、古典ラテン語の洗練された文体で書かれており、劇的な描写や雄弁な演説を交えながら、歴史を生き生きと描き出しています。 特に、英雄的人物像の描写や、重要な場面における登場人物の心理描写は、読者を強く惹きつける魅力を持っています。
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史料批判の欠如
「ローマ建国史」は、文学作品としての評価は高いものの、歴史書として見た場合、史料批判の点で問題点が指摘されています。 リウィウスは、資料の信憑性を厳密に検証することなく、伝説や伝承をそのまま歴史的事実として記述している箇所が少なくありません。
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ローマ的視点と愛国心
「ローマ建国史」は、ローマ人によって、ローマ人のために書かれた歴史書であり、そこにはローマ中心的な視点と、強い愛国心が色濃く反映されています。 リウィウスは、ローマの伝統的な価値観や道徳観を称賛し、ローマの偉大さを強調する一方で、敵対する勢力に対しては批判的な立場をとっています。