## リヴィウスのローマ建国史と時間
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リウィウスにおける時間の扱い
リウィウスは『ローマ建国史』において、ローマ建国から自らが生きた時代までの約700年間という膨大な時間を扱っています。
彼はこの歴史を、一年ごとにコンスル(執政官)を二人選出するというローマ独自の制度に基づき、コンスル在任年を軸とした編年体で記述しました。
各巻の冒頭にはその巻が扱う時代のコンスルの名前が記されており、読者は作品全体を通じて明確な時間の流れを把握することができます。
リウィウスはまた、重要な出来事が起きた年をローマ建国から何年目に当たるかで示す、アブ・ウルベ・コンディタ(ローマ建国紀元、AUC)紀年法も併用しています。
しかしながら、当時の史料の限界から、特に初期の年代においては正確性に欠ける部分も含まれている点は否めません。
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歴史記述における時間表現
リウィウスは年代の記述以外にも、物語に時間の流れを織り込む巧みな表現を用いています。
例えば、人物の年齢や任期、世代交代、都市や建造物の変化などを描写することで、読者に時間の経過を意識させています。
また、演説や対話の中で登場人物に未来への希望や不安を語らせることによって、歴史という静止した時点ではなく、未来に向かって絶えず変化していくものとして描写しています。
さらに、叙事詩的な表現を用いることで、単なる出来事の羅列ではなく、時間の流れの中で英雄たちが織りなす壮大な物語として読ませることに成功しています。
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時間と歴史観の関係
リウィウスの歴史記述における時間に対する意識は、彼の歴史観と密接に関係しています。
彼はローマ建国から自らの時代に至るまでを、ローマが小さな都市国家から地中海世界の大国へと発展していく、壮大な歴史劇と捉えていました。
そして、その歴史の流れを明確に示すために、時間を意識した記述を心がけていたと考えられます。
彼の作品からは、ローマ人の栄光と衰退、そして歴史の必然性といったテーマが、時間軸に沿って浮かび上がってきます。