リヴィウスのローマ建国史が扱う社会問題
共和政ローマ初期における社会対立:パトリキとプレブス
リウィウスの『ローマ建国史』は、王政ローマから帝政初期に至るまでのローマの歴史を壮大なスケールで描く作品であると同時に、建国期のローマ社会に内在する様々な社会問題を浮き彫りにしています。特に、貴族階級であるパトリキと平民階級であるプレブスの対立は、初期ローマ史を語る上で重要なテーマであり、リウィウスはこの問題を繰り返し取り上げています。
パトリキは、古くからローマに居住し、政治、経済、宗教などあらゆる面で特権を独占していました。一方、プレブスは、ローマに流入してきた人々や被征服民が多く、パトリキのような特権を持ちませんでした。リウィウスは、プレブスの多くが貧困に苦しみ、パトリキによる借金と高利貸しに苦しめられていた様子を克明に描いています。
身分闘争と政治改革の萌芽
このような状況下で、プレブスはパトリキに対して政治的な権利の拡大を求めるようになりました。リウィウスは、プレブスの要求が度重なる護民官の設置や十二表法の制定といった政治改革へと繋がっていく過程を詳細に記述しています。これらの改革は、ローマ社会におけるプレブスの政治的地位向上に大きく貢献し、パトリキとプレブスの政治的な平等に向けて重要な一歩となりました。
しかし、リウィウスは、これらの改革がもたらした成果だけでなく、その限界についても言及しています。パトリキは、依然として大きな政治的影響力を持ち続け、プレブスが完全に平等な立場を獲得するには至りませんでした。