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リヴィウスのローマ建国史から学ぶ時代性

## リヴィウスのローマ建国史から学ぶ時代性

リウィウスと彼の時代

ティトゥス・リウィウス(紀元前59年頃 – 17年頃)は、ローマ帝国初期のアウグストゥス帝の時代に活躍した歴史家です。彼の代表作である『ローマ建国史』(羅: Ab Urbe Condita Libri)は、ローマ建国から紀元前9年までのローマの歴史を142巻にも及ぶ大作として描いたものです。

リウィウスの生きた時代は、ローマが共和政から帝政へと移行する激動の時代でした。長年の内乱を経て、オクタウィアヌス(後のアウグストゥス)が権力を掌握し、ローマは新たな時代を迎えようとしていました。

建国神話と歴史叙述

『ローマ建国史』は、ローマの建国神話であるロームルスとレムスの物語から始まります。リウィウスは、伝説や伝承を交えながら、ローマ人の起源や建国の由来を壮大なスケールで描き出しています。

現代の歴史学の観点からは、リウィウスの歴史叙述には伝説や逸話が多く含まれており、客観性や史料批判の点で疑問視されることもあります。しかし、リウィウスは単なる歴史の記録者ではなく、当時のローマ人に共通のアイデンティティを喚起し、帝国の正当性を強調しようとする意図を持っていました。

理想化されたローマと道徳的メッセージ

リウィウスは、ローマの歴史を、質実剛健で公共心にあふれた人々によって築かれた栄光の物語として描いています。彼は、初期ローマ人の勇敢さ、忠誠心、自己犠牲の精神を称賛し、それらをローマが greatness を達成した要因として強調しています。

また、リウィウスは歴史叙述の中に道徳的なメッセージを込めることも重視しました。彼は、個人の野心や贅沢がローマの衰退につながると警告し、市民に対して共和政の伝統的な価値観である勤勉さ、質素、公共心を持つことの重要性を説いています。

アウグストゥスへのメッセージ

リウィウスの歴史叙述は、アウグストゥス帝の治世を正当化するプロパガンダとしての側面も持っていました。リウィウスは、ローマが内乱と腐敗によって衰退の危機に瀕していたことを強調し、アウグストゥスによる帝政の確立を、混乱を収拾しローマに再び安定と繁栄をもたらす必然的な出来事として描いています。

リウィウスは、アウグストゥスが、かつてローマを greatness に導いた先人たちの美徳を体現する指導者であると暗に示唆しています。彼は、アウグストゥスがローマの伝統的な価値観を復興し、帝国に新たな黄金時代をもたらすことを期待していました。

歴史書の枠を超えた影響

『ローマ建国史』は、単なる歴史書としてだけでなく、当時のローマ人の思想や価値観を理解する上で重要な文献です。リウィウスの描いたローマ人の理想像や道徳観は、後の時代の芸術や文学にも大きな影響を与え、ローマ帝国の文化形成に深く貢献しました。

また、『ローマ建国史』は、ルネサンス期以降、西洋世界において古典として高く評価され、多くの歴史家や政治思想家に影響を与えました。マキャベリやモンテスキューなどの思想家は、『ローマ建国史』から政治や歴史に対する洞察を得ています。

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