## リストの政治経済学の国民的体系の機能
### 1. ドイツ経済発展のための理論的枠組みを提供する
フリードリヒ・リストは、19世紀前半のドイツの経済学者であり、後進国であった当時のドイツの経済発展のために、独自の経済理論を構築しました。それが、「リストの政治経済学の国民的体系」です。この体系は、イギリス古典派経済学の自由貿易主義を批判し、国家による積極的な経済介入を主張した点に特徴があります。
### 2. 後進国の経済発展段階を明確化する
リストは、経済発展段階説を唱え、後進国が先進国に追いつくためには、特定の段階を経る必要があるとしました。彼は、経済発展段階を、(1)未開状態、(2)牧畜状態、(3)農業状態、(4)農業とマニュファクチュアの結合状態、(5)農業・工業・商業の結合状態、の5段階に分類しました。そして、当時のドイツは第3段階に位置しており、保護貿易政策によって国内産業を育成し、第4段階へ移行する必要があると主張しました。
### 3. 保護貿易政策の必要性を論じる
リストは、後進国が先進国との自由競争にさらされると、その国の産業は壊滅的な打撃を受けると考えました。そのため、後進国は、国内産業を保護するために、関税などの保護貿易政策を導入する必要があると主張しました。彼は、この保護を「幼稚産業保護」と呼びました。ただし、リストは保護貿易を恒久的な政策としてではなく、国内産業が国際競争力を獲得するまでの過渡的な措置として捉えていました。
### 4. 国家の役割を重視する
リストは、経済発展において国家の役割を非常に重視しました。彼は、国家が主導的な役割を果たし、産業育成のための政策を実施する必要があると考えました。具体的には、関税政策、鉄道建設などの社会資本整備、教育制度の充実などを提唱しました。リストの主張は、当時のドイツの政治状況とも合致しており、後のドイツ統一と工業化に大きな影響を与えました。
### 5. 経済ナショナリズムの理論的基礎を提供する
リストの経済理論は、国民国家の形成と発展を重視する「経済ナショナリズム」の考え方に基づいています。彼は、経済活動は個人の利益追求だけでなく、国民全体の利益に貢献すべきであると考えました。そのため、国家は、自国の経済的利益を追求し、国際的な競争に打ち勝つために、積極的に経済政策を展開する必要があると主張しました。リストの考え方は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ドイツや日本など、後発資本主義国における経済政策に大きな影響を与えました。
Amazonで詳細を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。