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リストの政治経済学の国民的体系の批評

## リストの政治経済学の国民的体系の批評

リストの保護主義に対する批判

リストは著書「国民経済学の国民的体系」の中で、自由貿易ではなく保護主義を主張しました。これは、当時のイギリスが提唱していた自由貿易主義に対抗し、後発国であるドイツの経済発展を促進するためでした。しかし、リストの保護主義は以下のような批判を受けています。

* **世界全体の経済効率性の低下**: リストは、一国単位での経済発展を重視するあまり、世界全体の経済効率性を軽視しているという批判があります。自由貿易は、比較優位に基づいて各国が最も得意とする分野に特化することで、世界全体の生産性を最大化するとされています。保護主義は、この国際分業を阻害し、非効率な産業を保護することになりかねません。
* **報復措置の誘発**: ある国が保護主義的な政策をとると、他の国も同様の政策で対抗する可能性があります。これは、貿易戦争を引き起こし、世界経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります。実際、1930年代の世界恐慌は、各国が保護主義的な政策をとったことが一因とされています。

リストの「幼稚産業保護論」に対する批判

リストは、後発国が先進国に追いつくためには、一時的に幼稚産業を保護する必要があると主張しました。これは、当時のイギリスがすでに確立していた産業優位に対抗し、ドイツの産業を育成するためでした。しかし、リストの「幼稚産業保護論」も以下のような批判を受けています。

* **保護の期間や対象の決定が困難**: どの産業を、どの程度の期間、どのように保護するかは、政府にとって非常に難しい判断となります。保護が長すぎると、その産業は国際競争力を身につけられず、かえって非効率になる可能性があります。
* **政府の失敗**: 政府が特定の産業を優遇することは、政府の腐敗や非効率性を招く可能性があります。保護されるべき産業ではなく、政治的に影響力のある産業が保護されるというリスクも存在します。
* **技術革新の阻害**: 保護は、国内企業の競争を弱め、技術革新を阻害する可能性があります。国際競争にさらされることで、企業は常に効率性や技術革新を追求するインセンティブが働きます。

リストの経済ナショナリズムに対する批判

リストは、国民国家の枠組みの中で経済活動を捉え、国家の利益を最優先する経済ナショナリズムを主張しました。これは、当時のドイツが統一国家として成立する過程で、国民意識を高める必要があったためです。しかし、リストの経済ナショナリズムは以下のような批判を受けています。

* **国際協調の軽視**: リストは、国際協調よりも国家間の競争を重視しており、国際協調による共通の利益の追求を軽視しているという批判があります。グローバル化が進む現代においては、国際的な協調なくして、地球規模の問題を解決することはできません。
* **排他的な国家主義へのつながり**: リストの経済ナショナリズムは、他国への敵対心を煽り、排他的な国家主義につながる可能性があります。実際、リストの思想は、後にナチスドイツに利用されたという指摘もあります。

これらの批判点は、リストの主張が完全に間違っているということを意味するものではありません。リストの時代背景やドイツの置かれた状況を考えると、彼の主張には一定の説得力がありました。しかし、現代の視点から見ると、リストの思想には限界があることも事実です。

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