## リストの政治経済学の国民的体系の周辺
リストの生きた時代背景
フリードリヒ・リスト(1789-1846)は、ドイツの経済学者、政治家です。19世紀前半、ドイツは政治的に分裂し、経済的にイギリスの後塵を拝していました。リストは、このような状況下で、ドイツ経済の自立と発展のために、独自の経済理論を構築しました。
国民経済学の成立
リストは、イギリスのアダム・スミスが提唱した自由貿易論に対して、批判的な立場をとりました。スミスの自由貿易論は、すでに産業革命を達成し、経済的に優位に立っていたイギリスにとって都合の良い理論であったとリストは考えました。
リストは、当時のドイツのように、経済的に発展途上にある国は、自由貿易によってではなく、保護貿易によって自国の産業を育成していく必要があると主張しました。そして、国家が積極的に経済に関与していくべきだとする「国民経済学」を提唱しました。
「リストの政治経済学の国民的体系」の内容
リストの主著である「政治経済学の国民的体系」(1841年)では、国民経済の発展段階を以下の5段階に分類しました。
* 牧畜段階
* 農業段階
* 農工融合段階
* 農工商融合段階
* 万能段階
リストは、それぞれの発展段階に応じて、国家が適切な経済政策を実施していくべきだと主張しました。そして、ドイツは農工融合段階にあり、保護貿易によって工業を育成していくべきだとしました。
リストの思想の影響
リストの思想は、当時のドイツだけでなく、アメリカや日本など、多くの国々に影響を与えました。彼の保護貿易論は、発展途上国が自国の産業を育成する上で、重要な役割を果たしました。
しかし、リストの思想は、国家による経済への介入を重視するものであったため、ナチスドイツの経済政策に利用されたという批判もあります。